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私の怒り心頭の様子を完全無視して兄は私に言い放つ。
「僕もあの聖女の杖が欲しかったんだ!なのにプリシラしか使えないなんて、悔しかったんだ!」
お兄様!私は杖を奪われても一向に悔しくないぞ!
「だから僕は、杖が無くても中級魔法を使えることを自力で証明してみせたんだ!ハハハハハッ」
兄は両手を腰に当てて胸を張って高笑いをしている。
つまり兄は私に触発されて中級魔法を使えるようになったってこと?
プリシラはそれを聞いて一瞬で怒りが吹き飛んだ。
あんな魔法を杖なしで普通に覚えて使えるなんて!お兄様はきっと天才だ。
「はい私は不完全な魔法使い決定です。だから杖に選ばれました!」
私は兄を煽てる方に、素早く転じる。
理由は何であれ、杖の存在が兄にも世の中にもプラスに作用することは良い事だ。少なくとも兄に卑屈になられるよりはマシってもんだと思う。
姉が学校から帰宅してきた。
「プリシラ〜王宮に行ってきたんでしょう!どうだった?第一王子殿下も学校をお休みされていたみたいだから、殿下にもお会いしたんじゃない?素敵な方だったでしょ」
と質問攻めにあった。
すでに色々と精神的に疲れ切っていたプリシラは「第一王子殿下は国王陛下に徹夜で仕事をさせられたから、お休みだったんじゃないですか?目の下にクマを作ってましたよー」と言って部屋に早々に戻らせてもらった。事実だし。
目を白黒させる姉の横で、母が「プリシラらしいわ」と言って笑っていたそうだ。
春になり、プリシラはとうとう念願の学校に入学した。
学校の選択科は騎士科、魔法科、紳士淑女科に別れていて魔法騎士を目指す場合は騎士科で魔法の専攻をする。
魔法科と騎士科の違いは魔法と剣術、どちらの必須授業が多いかの違いしかない。
2年目は基本の学科は1年目と同じだが、騎士や魔法使いを兼任しながら、別のスペシャリストになる為の選択科目がたくさん増える。
つまり魔物がいつでも現れる世界なので、貴族全員が戦闘要員である事が前提の学校なのである。
そして紳士、淑女科とは唯一、非戦闘要員用の学科で“戦闘が無理なものは仕方がない”という開き直りの学科で男性も多い。
だけど、この学科だからとバカにされる訳ではない。この学科のみ2年間だが、紳士淑女とは名ばかりで内容は戦闘要員の世話を学ぶ内容が多いからだ。
料理、洗濯、医療行為、理髪、裁縫など、ほぼ戦闘中に戦闘に出る者達の衣食住をフォローする役割だ。
この国の身分制度とは、貴族は領主として領民を魔物から戦って守る立場なのである。そういう明確な立場と役割があるから平民からの不満も無いのだろう。
プリシラは当然、騎士科に入るつもりでいたのだが、祖父と父に止められた。プリシラは剣術も学んでいるが、戦いながらの魔法は聖女の杖のせいで難しいだろうと言われたのだ。
確かに物理攻撃の際中に、剣から杖に持ち替えて魔法を発動することは困難だ。戦闘中に握るのは剣か杖か一択だ。
と言うことでプリシラは魔法一択ということになった。
だがプリシラの性格上、防衛と回復や強化の補助魔法だけなんてあり得ない。
攻撃は最大の防御だ。したがってプリシラは攻撃魔法も覚えようと心に決めた。




