第九章:拒絶する宿主、二つの血の戦争
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「ひとつに……なろう……」赤目のささやきは、村人たちの唱える呪文の轟音にかき消された。
穴の中で、江戸の体と赤目の半身は溶け合い、のたうち回る数千匹の森の蛆虫によって縫い合わされようとしていた。しかし、彼らの神経が完璧に繋がろうとしたその時、あり得ないことが起きた。
ドクンッ!
江戸の心臓が激しく脈打ち、純潔なる如月の血を結合部へと送り込んだ。突如として、二人の肉体が触れ合っている箇所が白熱し始めた。それは火の熱さではなく、腐食性の化学反応による熱だった。
「あああああッ! 熱い! 焼けるようだッ!」江戸が咆哮する。しかしその声は、赤目の金切声と重なり合っていた。
如月の血――何世紀にもわたってこの森を支配し、命令を下してきた抑圧者の血が、黄泉津の血と対等に交わることを拒んだのだ。江戸の血は混ざり合うどころか、強力な酸のように赤目の細胞を攻撃し始めた。
ガリィッ……ッ!
二人を縫い合わせていた蛆虫たちが、衝突するエネルギーの圧力に耐えきれず、一匹、また一匹と弾け飛ぶ。癒着しかけていた肉が、猛烈な力で再び引き裂かれていく。
「何が起きているの!?」冥が叫んだ。その蒼白な顔には今、恐怖が刻まれている。「儀式が……儀式が失敗してる! 如月の血が、器を共有することを拒絶しているんだわ!」
狐面の老婆が一歩後退し、手を震わせた。「王の血か……幽霊と共に葬られることを拒んでいる! 内側から自らを解体しているのだ!」
死に体の激痛の中で、江戸の意識は逆に研ぎ澄まされていった。彼は悶える赤目を見た。江戸の神秘的な免疫システムによって拒絶され、繋がろうとした腰の部分は黒い肉塊へと崩れ去っていた。
(僕は……お前たちの一部なんかじゃない……)江戸は心の中で呟いた。(ドナーでも……器でもない!)
溢れ出すアドレナリンと残された力を振り絞り、江戸は血まみれ の手で赤目の体に食い込んでいた有刺鉄線を掴んだ。もはや恐怖はなかった。彼はその鉄線を、自らの荒れ狂う血からエネルギーを爆発させるための触媒として引き寄せた。
ドォォォォンッ!
黄金色を帯びた赤黒い血が江戸の傷口から噴出し、近くにいた村人たちを直撃した。その血を浴びた者たちは、皮膚がただれ始め、悲鳴を上げた――純粋なる如月の血は、裏切り者たちにとっては猛毒そのものだった。
冥は呪文を繋ぎ止めようと近づこうとしたが、江戸は彼女を射抜くような目で見つめた。その瞳は今、黄金色の光を放ち、瞳孔は砕けて奇妙な紋様を形作っていた。
「冥……僕はこの森の『子宮』だって言ったよね?」江戸は立ち上がった。足はまだボロボロで、怯えた蛆虫の残骸だけで辛うじて支えられている状態だったが。「もし僕が子宮なら……この村に『破滅』を産み落としてやる」
江戸は黒い液体を吐き出したが、その口元には笑みが浮かんでいた。彼の血は体内の戦争に勝利したが、その代償は大きかった。今、一秒経つごとに、彼自身の細胞も崩壊へと向かっている。
彼は今、姨捨村の心臓部で爆発を待つ、生体時限爆弾と化したのだ。




