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第六章:鉄線の奥に眠る、不滅の父

#R15 #残酷な描写あり #都市伝説 #ホラー #村ホラー #サイコホラー #復讐 #ダークファンタジー #ヤンデレ #テケテケ

江戸は暗闇の中で静かに脈打つガラス瓶から遠ざかるように、後ずさりした。ホルマリンの臭いに、非常に聞き覚えのある生臭い香りが混じり始める――十年前、父が愛用していた香水の匂いだ。


「冥……嘘だろ? 父さんは火葬されたんだ! 僕はあのお骨を見たんだ!」江戸は震える声で叫んだ。抑えきれない嗚咽が喉を焼く。


冥はただ暗闇の中に立ち尽くしていた。部屋の隅にある小さな祭壇の蝋燭が、彼女の影を巨大な怪物のように引き伸ばしている。「あなたが涙を流したあの灰は、ただの薪の燃えかすよ、江戸くん。如月の体は、塵にするにはあまりにも価値がありすぎるの」


冥が錆びついた鉄のレバーを引いた。突如、部屋の中央にある巨大なカプセルが、木の床の下からゆっくりとせり上がってきた。


その中には、濁った液体は入っていなかった。そこにあったのは、複雑な生命維持装置に取り付けられた下半身――腰から足にかけて――だけだった。そして装置の上部、数千本もの人工神経ケーブルに繋がれた、固く目を閉じた人間の頭部があった。


「父さん……?」


江戸は震える足で近づいた。その顔……シワが刻まれ、紙のように蒼白ではあったが、それは江戸がヒーローとして記憶していた父、如月きさらぎ 壮介そうすけの顔だった。


しかし、恐ろしいのはその体がどう「生きて」いるかだった。胸から上の部分は、人工臓器として編み込まれた有刺鉄線の塊に置き換わっていた。その鉄線は絶えず蠢き、まだ機能している足へと血を送り続けていた。


「シュゥゥゥ……」装置から蒸気の漏れる音がした。父の瞼がゆっくりと開く。


その目にはもはや虹彩はなかった。ただ、深い漆黒の穴があるだけだ。乾ききった唇がかすかに動き、骨が擦れるような音を絞り出した。


「父さん! 僕だよ! 今出すからね!」江戸は血まみれの手でカプセルのガラスを叩こうとした。


「や……めろ……」父は苦痛と、そして飢餓感の入り混じった眼差しで江戸を見つめた。「逃げ……ろ……江戸……奴ら……奴らはまだ……私の足では満足して……いない……お前の……目が……必要なんだ……」


突如、父の体内の有刺鉄線が伸び始め、ガラスの内側を突き破ってひびを入れた。冥は一歩前へ出ると、まるでペットを可愛がるようにそのひび割れたガラスを撫でた。


「お父様は十年間、この村の守護者たちの『足』を支えるために耐えてきたのよ、江戸くん」冥がささやいた。「でも、この機械はもう古いの。鉄線も錆び始めているわ。私たちはもっと新鮮な、新しい神経系を必要としているの。もっと……若い如月をね」


倉庫の天井を何かが這い回る音がした。テケ……テケ……テケ……


暗闇の天井から赤目が現れ、江戸の真上に陣取った。血の混じった唾液が彼女の口から滴り落ち、江戸の手の傷口に命中した。


「江戸くん……」赤目がささやいた。その声は今、父の生命維持装置の駆動音と重なり合って響いた。「貸して……あなたの……背骨……私……また……歩きたいの……」


江戸は最も過酷な真実を悟った。如月家は村の寄付者などではない。代々収穫されるための「生体スペアパーツ」なのだ。そして冥は、今夜自分を解体する技術者エンジニアなのだ。


「お父様との再会を楽しんでね、江戸くん」冥は儀式用の短刀を高く掲げながら言った。


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