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BOSS!!   作者: 桜花
16/19

イタリアのファミリー


「やっほー、真希」

 隠し部屋になっている基地に入るなり、ソファーに、かなり偉そうに寝転んでる真希に手を振りかえす。

「やっほー、夏紀。陽太は?」

「本屋寄ってくるってさ。辞書買うんだって」

 ……辞書?

「イタリア語だろ?」

背後からリディオの声。何か知ってそうだ。黙って続きを聞いてみる。夏紀が、この前から持ちっぱなしの拳銃のハンマーを、あげたり戻したりしながら答えた。カチ、カチと不規則に音が響いている。

 危ないな。そう思いつつ私が見ていると、夏紀が気づいて、底を見せてきた。弾は入っていなかった。

「そうだと思うよ」

「イタリア語?」

リディオを見る。

「陽太に見られたんですよ。俺が書類の整理してるとき、こんなにたくさんやるのか、って」

「なるほど、私が心配するまでもなかったって事か」

私が思うより、まとまっていたようだ。

「会長は生徒会があるから遅くなるってさ」

 リディオが、パソコンを立ち上げながら、夏紀に言う。

「結局、会長に落ち着いたんだ? 呼び方」

 どんどん話がずれていくが、会話が絶えないのはありがたいし、いいことだと思う。

「はい、ボス。今朝届いたメールです。……正式な文書は、後ほど届くと思いますけど」

 そこには、確かにイタリア語の文書があった。メールなので、筆記体の文書よりも読みやすい。

「……情報源は確かなの?」

「俺が保証します。向こう(イタリア)のファミリーですよ。俺の次に出世が早いです。兄弟みたいなんですけど、ライバルです」

 なるほど。リディオと同じように、親の代からファミリーなのか。子供の頃から将来を決められるって、かなり厳しいと思う。人のことは言えないけれど。

 それより、早くやってもらいたいことがある。本部の遠隔操作は難しいと思っていたけど、そういう子がいてくれるなら、できることはぐんと増える。

「リディオ、至急、この子を介して、本部に連絡を」

「いいですけど……」

 リディオの顔に、緊張が走る。

「ベルガミーニの情報を、本部から探って欲しい。できるだけ秘密裏に。ベルガミーニに繋がる情報は、なるべく多く。関連ファミリーのこともできるだけ調べてくれたら嬉しい。それから、すべての情報は、一切カットせずに日本に連絡すること。……あと、クイントが亡くなったってことは、まだ外に漏らさないで」

「なぜ、発表してはいけないんです?」

 リディオのこの目、絶対分かってて聞いてる。

「私たちが動きづらくなったら困るから。折角、向こうが、まだ父さんを次期ボスだと思ってるんだよ? わざわざ私たちの行動を制限する必要なんてないよ。それに、本部を本部としてここ(にほん)から動かすには、それが一番手っ取り早い。せめて、ベルガミーニに仕返しするまでは……」

リディオに向けて、ニッと笑う。

「でしょ?」

リディオも、ため息をついた。

「完敗です。そう伝えておきます」

「あ、リディオ。もう一つ……」

「なんですか?」

 リディオのサブバッグを指さして、言う。

「リディオと同じ拳銃、――ベレッタM29Fを、4丁。あるいは、アロンツォさんの分も。()()()()で」

夏紀が反応した。

「マイ銃?」

「そう。――おそろい」

 おそろいなんて、小学校以来だ。少しくすぐったいけど、嬉しい。

 仲間がいるって、いいな。

「了解、ボス」

 リディオが、ノートパソコンを自分の方に向け、メールソフトを立ち上げる。

「それにしても」

見事なブラインドタッチでメールを作成しつつ、私に問いかけた。

「拳銃まで調べ上げるとは。流石です」

「ベレッタはすぐ出てきたよ。アメリカ軍でも使われてるらしいし。今夏紀が持っているのは、旧型のベレッタM1951でしょ?」

 相変わらず、旧式のベレッタM1951で遊びつつ、夏紀も参戦してくる。

「イタリア関係ないじゃん」

「作ってる“ベレッタ社”がイタリア」

「なるほど」

私が言う前に、リディオが答えた。流石に知っているらしい。

「でもボス、今は少し我慢して、次の軍採用モデルを買った方が良くないですか? まぁ、次はベレッタ社じゃないらしいですが……」

 私は、別にそれでもいいと思ったのだ。その情報も、ベレッタM29Fを調べたときに出てきた。でも、いくつかの理由から、却下にしたのだった。

「ひとつは、リディオが持ってるそのベレッタ。それ、かなりいじってあるでしょ。正規の形とは全然違うもん。あと、予算も。こっちに書類が回されてない以上なんとも言えないけど、できるだけ節約したいんだ」

リディオがため息をついた。

 ……何か変なことを言ったかな?

「ボス、予算の心配なんて――」

「そりゃあ、私たちが贅沢できるくらいの資金はあると思うよ。でも、無駄遣いは好きじゃないし。最終的には、日本基地の経営は、雑貨店の売り上げだけでやりくりしたいと思ってるしね。今は無理だろうけど」

 雑貨店の売り上げはひどいものだ。ギリギリ黒字だが、気を抜いたら即終了、そんな気がするほどに危うい。どうにかして、売り上げを伸ばしたいな。

 どうするかを考えるうち、私の頭脳の回転は速くなっていく。

 そして、その回転は、唐突に遮られた。


「こんちは~」

「遅くなりました」


 陽太と会長が来たようだ。

 幹部全員がそろったところで、話し合いが始まる。

 ……まぁいいや。今日、その話もしてみよう。私は、アイディアを整理しきれないまま、一旦考えることを止めた。



カクヨムにて、BOSS!!をまとめ直し始めました。

良ければご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884721624

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