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BOSS!!   作者: 桜花
11/19

他ファミリーの襲撃


 2階、玄関(?)に一番近い部屋。

 机を挟み、目の前のソファーに座る生徒会長。

 リディオが出したお茶を無視し、手紙を取り出す生徒会長、橘亜紀(たちばな あき)さん。二つ年上の先輩だ。黒いストレートの髪を、背中に流している。眼鏡があれば、アニメやマンガでよくある“生徒会長”になるだろう。

「この手紙をくれたのはあなたたち?」

会長が、私、夏紀、陽太、リディオを順に睨む。リディオが、神妙な顔をして頷いた。

「間違いないです」

会長はため息をつく。

こんなもの(・・・・・)に首を突っ込んで、危ないことするんじゃない。こんなの、巻き込まれてる人からしたら、いい迷惑だよ? 遊ぶのは個人の勝手だけど、それに人を巻き込むのは感心しないね」

 ……言いたい放題言ってくれるな。聞いてて、そこまで言う!? って思った。隣のリディオは限界のようだ。

「そこのみんなも、巻き込まれてるだけなら、こんなの(・・・・)止めた方がいいよ」

会長のその言葉が、決定打となった。

「参加しないなら来なくていいと書いたのに、説教なんかのためにわざわざお越しいただき、ありがとうございました。……俺だけならいいけどな、ボスやファミリーを馬鹿にされちゃ、黙ってらんないね!」

 ガバッと立ち上がると、眉間にしわを寄せ、まだ座ったままの生徒会長を見下ろすように見る。部屋の隅の引き出しを開け、黒く光る拳銃――初日に見た物とは少し違うように見える――を取り出す。そして、その場で、それを、容赦なく生徒会長に向ける。

「悪いけど、俺は、生粋のマフィアっ子なんだ」

なんだそりゃ、という突っ込みを入れられる雰囲気ではなかった。

 チャ、と軽い音がした。引き金にはかけず、ピンと伸ばしてフレームに沿わせていた人差し指で、トントンとフレームを軽くたたく。

 生徒会長はと言えば、優雅にお茶を飲み、まるで動じていない。おもちゃだと思っているんだろうか。

 残念ながら、あれは本物だ。何回か、整備の時に見ているから分かる。あれは本来、リディオの愛用している物ではない。みんなで使える、非常用の物だ。非常用の拳銃は、このビルの至る所においてある。

「……ボス」

リディオに呼ばれ、近寄る。次の瞬間、リディオが叫んだ。

「伏せろ!!」

 瞬間、窓ガラスが割れる甲高い音が響き、私の真横の窓が、きれいに光を反射するかけらとなった。さっきまで私の立っていた位置の床に散らばるガラス。

 ものすごい勢いで着地したガラス達は、信じられないほどに高く跳ね、遠くまで散らばった。

 生徒会長は、足下まできて靴にぶつかったそれを、しばらくの間見つめ、慌てて立ち上がる。

 直後、生徒会長の顔のすぐ横を、乱雑に開けた窓から飛び込んできた何かが通過し、壁にへこみを作った。低い位置だ。随分と上から打ち込まれたらしい。

 ぺたんと、床に座る生徒会長。

「……弾丸だ」

 リディオが小さく言ったが、それは、静まりかえった室内ではよく響いた。陽太が反応する。

「でも、なんでだ。……発砲音はしなかった」

「サプレッサーだな」

音を聞いてきたらしいアロンツォさんが答えた。

「生徒会長、だいじょ……」

リディオが顔をしかめると同時、私は生徒会長に駆け寄ろうとし、リディオに腕を捕まれ、止められる。

「ボス」

空いた左手で差し出してきたのは、さっきリディオが持っていた拳銃。小さいけれど、黒く光り、それなりに重い。先がやけに長いが、これがサプレッサーだろうか。

 私がそれを受け取ると、リディオは自分用の銃を出す。持っていたようだ。リディオの銃も、サプレッサーが付いている。

「撃ち方は分かりますね? ――人差し指は、フレームに沿わせておいて。撃つ瞬間まで、引き金に指はかけないでください」

 急に敬語になったリディオ。それが、けじめのように思える。

 ――これは、私が、ヴェルデファミリーの(次期)ボスとして、しなければならないこと。

「それは、自分の身を守るために使ってください。最後の手段に」

「……分かった」

 返事を聞き、わざと、部屋中に聞こえるように言うリディオ。

「他ファミリーからの攻撃です。ボス、指示を」



 私は、目を閉じ、細く、長く深呼吸する。目を開いて、部屋を見渡した。

「弾丸が当たった角度を考えて、向かいのマンションの、ここから1つ上の階の踊り場からだと思う」

 ――同じ高さから撃ち込まれた物ではない。それならば、壁の真ん中当たりに、壁に垂直に当たるはず。低い位置ならば、天井付近に当たるはずだから、ここよりも上の階。窓から入れるには、2階上からだと無理がある。

「挟み撃ちにする。降参させるよ」

「どうやって?」

陽太が聞く。それは、と言いつつ、頭をフル回転させる。

「陽太と夏紀は、下の店の裏口からでて迂回、隣のマンションから屋上をつたって、上から合流。リディオと私は下から向かう。屋上に出られると面倒だから、なるべく早く挟み撃ちにしたい。アロンツォはここで生徒会長を保護、外へ出さないで」

みんながそれぞれに返事をするのを確認して、リディオに頼んで、夏紀にも銃を渡してもらう。

 私と同じ形のように見えるが、もはやそれはどうでもいい。3発目となる銃弾が撃ち込まれたからだ。

「夏紀、サバゲしてたよね。なら、エアガンを持ったことがあるよね。もし、向こうが撃ってこようとしたら、できれば銃だけ飛ばすのが良いけど、手でも良い。最低限の弾で、撃てなくして」

「ラジャー!」

 夏紀のスイッチが入る。そういうのが好きな夏紀は、スイッチさえ入ればノリノリでこなしてくれる。

「できるだけ傷つけないこと。……Facciamolo(やろう)!」

その言葉を合図に、みんながそれ動き始める。夏紀達は、颯爽と部屋を出て、一階へ移動したようだ。



 私とリディオは、おとりの意味も含めて、堂々と、2階の階段から外へ出た。小走りで移動し、マンションの下から階段を駆け上がる。暗くなってきた外は、街灯の明かりがそろそろ目立ち始めた。

 曲がったら撃たれる、ということがないように、わずかとはいえ実戦の経験があるリディオを前に、私も、周囲を警戒する。

 


 次が3階だ。

Ecco(そこ)!」

 先に顔を出したリディオが、銃を構えた。

 そこには、普通のサラリーマンらしき、スーツを着た男性。

「なんで、俺がこんな目に!?」

 ――銃は、無い。

 一瞬、普通の人かと思ったけれど、すぐにきびすを返して階段を駆け降りる。2階の踊り場からチラッと見ると、キョロキョロと何かを探すスーツの男。道、丁度踊り場の真下当たりには、小さな黒い鞄を拾うスーツの男の人。一見サラリーマンだが、今、確かに、鞄を探していた。

「そこ!」

 いぶかしげに振り返る男から銃を隠し、挑戦的に問う。

「鞄の中身は何だ?」

「なんだよ、急に……警察に言うぞ」

「言えないくせに!」

むかっとして、言い返す。随分と演技派のようで。嘘ばっかりじゃん!

 私が銃を向けると、男も慌てて銃を出す。私は、男の鞄に狙いを定める。私が引き金に手をかけた瞬間、男の銃に何かが当たり、男の手から銃が離れ、カシャン、と軽い音を立てて落ちる。同時に、私は、引き金を引いた。



 銃声はせず、ただ静かに、男の手から鞄が離れた。



 1.5階の踊り場から陽太が飛び降り、着地と共に一回転、起きると、男に、柔道の投げ技を決めた。

 私は、伸びてしまった男を横目に鞄を拾うと、3階を見る。

 優しく笑うリディオと、誇らしげに手を振る夏紀が見えた。

 それを見て、自然と力が抜けた。ふう、と息を吐くと、2人に笑顔を返した。



Facciamolo! “ファッチャーモロ” 「やろう!」という意味のイタリア語。


この物語はあくまでもフィクションです。実際の科学、法律、イタリア語、裏社会などには一切関係ありません。

……だから、銃刀法違反とか言わないでください。一応、サプレッサーはつけていて、近所から通報されないようにとか、騒ぎを大きくしないようにとか、ヴェルデファミリーなりに考慮はしてるんですよ。ですが、輸入どうするんだとか、そういうことは聞かないであげてください。

あと、今回出てきた銃の名前は、後々書こうかと思います。

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