間奏曲
主人公の意識というか感情というか……
う~ん、言葉で表すのは難しいなぁ。
夢を見ていた。
深い深い夢を。
深い底に私は落ちている。
何処かわからない見覚えの無い、あるはずの無い部屋の真ん中で私とたくさんの少女が笑いあっている。
数は私を含めて十一人。
糸をたぐり寄せるように手を伸ばし、此方へとそれを引っ張るが、その糸はプツリと千切れてふわふわと消えていった。
これは私の記憶なのだろうか、それとも私の頭が小賢しくも勝手に造り出した妄想なのだろうか、わからない…わからないが、忘れてはいけない何かだと脳が告げている。
忘れてしまっては取り戻せない何かだと脳が告げている。
離してはいけないものだと私自身がそう告げている筈なのに。
最早、意識を保つことすら億劫で気だるい。
ひどく嫌な気分だ。
傘を差さないまま土砂降りの中を裸足で何キロも何キロも歩き続けるぐらい気分が悪い。
もしくはインフルエンザにかかっていながら持久走を走って、更に走り高跳びをするくらい気分が悪い。
具合の悪い時に保健室に向かうことを試みるも仮病だ、と囃したてられることを恐れて、くだらない一日を終えるくらい気分が悪い。
そこまで仲良くない友人が私と挨拶を交わし、不思議に思ったあと、その友人が私の後ろにいた別の人間と挨拶を交わしていたことに気付いたときぐらい気分が悪い。
そう思っている間にも断片的な記憶が見え隠れして、私の近くでおちょくるように浮いている。
胸に込み上げる何かを押さえ、動かすことすらもままならない腕でそれを掴みとる。
ぐっ、と力を入れた瞬間私の中で何かが消えた。
不透明だった筈の意識も、どこか違和感を抱きながら鮮明に感じる。
(あれ?…私は……私は何を見ていたんだっけ……?)
(…私は何をしていたんだっけ……?)
(私は……私は……?)
込み上げるものが何か理解できず、またも、ぼやける意識の中、何故か一滴の涙が頬を伝う感覚だけがやけにリアルに感じられる。
二滴、三滴、ポタポタと落ちていく涙が滲み、ぼやけていく視界が更に不鮮明な世界に変わっていく。
移り変わる感情の中で、只一つ『自分が涙を流している』ということを理解し、私は意識を手放した。
これが、何の『キッカケ』なのかも理解できないまま。
挨拶のくだりはほとんど私の実話ですが裸足の話は嘘です。
でも、一回位ははっちゃけてみたいと思っているという……。
雨は嫌いです(断言)