行進曲
今回は短い
「……ここは…」
目を覚ますと記憶が戻っていた、なーんてことは無く、あるのは此処に来た記憶、それだけだった。
どこか夢を見ていたような見ていないような、まあ、夢なんて覚えていたってしょうがない。信じるにも値しないだろう。
「おはよう!目を冷ましたんだね!」
先程いた部屋ではない別の部屋に移動させられ、ベッドに寝かされていたようだ。扉が開き彼女と修道服の女性が入ってくる。
「さっきはすまなかったね…うっ」
駆け寄ってきた彼女。呻き声をあげたのは駆け寄った途端、後ろにいた女性に頭を叩かれたからだ。
その女性こそ私の記憶の最新部に位置する修道服の女性だった。
まるでシスターのようだ。
派手な服を着ている訳ではないのに美しく見えるのは、単純に彼女の容姿が美しいからだろう。
長い黒髪がつやつやとしている。首には十字のネックレスが光っている。
黒い修道服がとても似合っていた。
「先程は、トレーネが申し訳ありませんでした、ローゼ様」
女性が頭を下げる。
もしかしなくても『ローゼ』という厨二全開フルスロットルの名前が自分のことを指しているのだろうか。と言うのも彼女の態度からして明らかだったが。
そして、『彼女』という敬称で定着してしまっていたが、『彼女』は『トレーネ』という名前らしい。
れっきとした日本人の私にとってはあまり馴染みのない横文字の名前だった。むしろ呼ぶのが恥ずかしい気がした。
「私は『ミューデ』。『ミューデ・アルクフューラー』と申します。」
と言ったところでトレーネさんが自分も、と言わんばかりにミューデさんを押し退け、声をあげる。
「名乗り忘れてたけど私は『トレーネ』。君を此処に召喚した魔法使いにして、自分で言うのも何だけど…賢者みたいな扱いを受けてる。まあ、要するに賢者だね」
「何処が賢者なのかしらね」
トレーネさんはその声を無視し、続ける。
「ちなみに、『ローゼ』って言うのは君の名前ね。いきなりでちょっとばかり疑問を持ってるようだけど、これは私がつけたわけじゃなく君に定まっていたちゃんとした君の名前だよ」
「……?」
「まあ、作者の都合ってとこだね…ぐはっ」
「まさかの物理攻撃!?」
ミューデさんが腹を殴りトレーネさんが倒れる。そして笑う。
「ご飯にしましょうか、お腹が空いてたら始まりませんから」
「……はい…」
作者の都合です………




