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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
専門職としての心得

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第8話 撤退勧告と決死の囮作戦

第8話 撤退勧告と決死の囮作戦

 監査官が到着してから二日後。城主ドリアルに呼び出された太一、アマリア、リンの三人は、重苦しい空気が漂う応接間へと向かっていた。


「何やら嫌な予感しかしないのう!」


 アマリアが不安そうに身を寄せた。


 入室した三人を迎えたのは、椅子に力なく腰掛けるドリアルの姿だった。


「何か良くないニュースでもありましたか?」


 リンの問いに、ドリアルは重い口を開いた。


「……二つある。一つは、城兵諸共、討って出よとの帝国からの命。そしてもう一つは……傭兵や冒険者、そして貴様らヒーラーは、一時前線から後退せよとのことだ」


 その場に衝撃が走る。


「我らは如何すれば……?」


「案ずるな、そなたらの扱いは冒険者という位置付けだ。自由にしてよい……」


 そこへ、救護施設の将校が入室してきた。かつて太一に反発していた彼は、神妙な面持ちで頭を下げた。


「ドリアル様、準備が……。……ヒーラー、そして女神様。いつぞやは無礼を働いた。許してほしい。君たちなら、この異世界の不条理を覆せるかもしれんな」


 ドリアルは執事に命じ、黄金の詰まった袋を三人に渡した。


「少ないが取っておきなさい。そなたらは死んではならんぞ」



 夕刻、馬車の荷台に乗せられた三人は、城を後にした。奇襲を仕掛けるという軍の出撃を見送る形だ。だが、魔王軍はすぐそこまで迫っていた。


「……太一。いいのか? 我らだけで逃げて」


「……いいわけないだろ!」


「やりますか……!」


 三人は馬車を飛び降り、戦火の上がる方角へ全力で駆け出した。


「待て、そろそろ前線だ! みんなにリジェネを付与するぞ!」


「リン、悪いが俺たちは攻撃力ゼロだ。ヒールとリジェネで全力バックアップする!」


「戦さのことは私に任せろ!」


「頼もしいぞ、リンよ!」


 戦場に辿り着いた三人が目にしたのは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。


「あれは……ゲルゾラーダ! 空を飛ぶ悪魔だ! みんな、首を守れ!」


 リンの叫びと共に、上空を旋回する悪魔が急降下してくる。間一髪で横っ飛びに回避したアマリアが悲鳴を上げる。


「ひえええ! 怖すぎるわ! リン、頼むぞ!」


「しかし、奴の弱点が分かれば……っ!」


 太一は自らの頭を叩いた。


「ハッ、こんな時のための『ライブラ』じゃねえか、俺のバカ!……ライブラ!!」


 判明したステータスは驚愕のものだった。


【ゲルゾラーダ:レベル50/HP60000】

「弱点は……後頚部! うなじだ!」


 太一は覚悟を決めた。


「よし、アマリア! 俺が囮になる。攻撃される瞬間に合わせて『ヒアリル』で回復しまくってくれ!……来たぞ!! リン、頼む!!」


「任せろ!」


 悪魔の鋭い爪が、太一の胸を深く貫いた。だがその刹那、アマリアの即時ヒアリルが炸裂し、傷口を瞬時に再生させる。


「リン、今だ!!」


「喰らえええええ!!」


 リンの剣が、無防備になった悪魔のうなじを深々と切り裂いた。


「やった……か……?」


 太一は崩れ落ちた。


「グェ……爪が刺さったままだ……早く次の、ヒアリルを……」


「おおい、太一大丈夫か!? ヒアリル二発連発は身体に堪えるぞ!」


「いいから……早くしろ……っ!」


 この決死の光景を、残存していた城兵たちが目撃していた。


「おお……あのヒーラー、とんでもない作戦を立てやがる」


 救護施設の将校は、震える声で呟いた。

「ドリアル様……彼らこそが、真の勇者ですぞ……」

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