第4話 女騎士の診察
第4話 女騎士の診察
騎士は、悪夢を反芻するように語り出した。
「俺たち『栄えある』フランシア帝国騎士団の精鋭五百が前線に立ったのは一週間前だ。この城はフランシアの属国が治めているんだが、援軍要請で配属された。……貧乏くじを引かされたのさ」
騎士は太一に問う。「魔王が復活したのは知っているか?」
太一は首を振ったが、隣のアマリアは気まずそうに目を逸らしている。
(こいつ……ガチで魔王がいる場所に俺を飛ばしやがったな)
太一の冷ややかな視線を、アマリアはスカスカの口笛を吹いて誤魔化した。
騎士は大きな汗をかきながら、なおも続ける。
「並の魔物なら倒せる。だが奴らは桁違いだ。俺たち『栄えある』騎士団でも、奴の前では紙切れのようだった。……ゲルゾラーダ。そう呼ばれた悪魔は翼を持ち、俺たちの上空を飛んだかと思うと、仲間たちの首が次々に飛んだんだ……。俺は右腕で庇い、後ろへ吹っ飛んで命拾いした。だが、逃げ帰ってこのザマさ」
「なんてこった、太一よ……。あとは任せて、あたしは帰ってもいいか?」
「ダメに決まってるだろ。急変時には残業するのが当たり前だ。仲間を置いて帰るな」
「誰が仲間じゃ……」
「おい、それを言っちゃおしまいだぞ。こんな職場に連れてきやがって……」
「……それは……謝る」
アマリアが珍しく素直に謝罪した。
「初出勤でこんな戦場に連れてくるような仕事紹介業者は、次から顧客がつかないぞ」
太一は騎士の肩を叩いた。「まあ、今は安静に。腕を治そう」
「ああ、ありがとうな」
その時、太一の頭にアナウンスが響いた。
「お、太一よ、今の処置でまたレベルが上がっておるぞ。スキル、『ライブラ』……? なんじゃらほい?」
「ライブラ。……相手のステータスを読む魔法だな。これは使える」
太一はさっそく次の患者に目を向けた。
「太一……次の騎士はやたら美人だな。わざと選んだな?」
「何言ってんだ、順番だろ! 順番!」
「ふん。ライブラで何を『見る』つもりやら。その娘のプライバシーを覗くことは、この女神アマリア様が許しません!」
「言ってろ、駄女神が!」
太一は目の前の美しい騎士に、アイスブレイクを兼ねて声をかけた。
「……あなたもフランシアの騎士団員ですか?」
すると、彼女は鋭い視線で太一を射抜いた。
「私をフランシアの弱腰騎士と一緒にするな」
その言葉に、周囲のフランシア騎士団がざわつく。
「あ、まあまあ。で、どちらの方で?」
「私はアーメリア騎士団のリンだ」
「なるほど、リンさん。では症状を見てもいいですか。……ライブ――」
「待てーい!!」
アマリアが割って入る。
「なんだよ、アマリア!」
「ライブラでスリーサイズなんて読むなよ!」
「うるさいよ、仕事中だ!」
そのやり取りを見て、リンがふふふ、と声を漏らした。
「ここは戦場だろう? なんだ、その緊張感のなさは」




