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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
ダメな女神と不運な男

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第3話 戦時下の「リハビリテーション」

第3話 戦時下の「リハビリテーション」

 異世界の朝日が昇り、街はその全容を露わにした。

 宿を出た太一とアマリアは、目の前の光景に言葉を失う。


「た、太一……これは……」


「ひ、ひでぇな……」


 メインストリートの両脇には、負傷した夥しい数の騎士や傭兵、冒険者たちが溢れかえっていた。一攫千金を夢見た者、国の危機に馳せ参じた者。かつての勇者たちは今、泥と血にまみれて横たわっている。


 慌ただしくメディック(衛生兵)が走り回っているが、負傷兵の数に対して圧倒的に人手が足りていないのは明白だった。


「噂には聞いておったが、とんでもない世界じゃな……」


 アマリアが息を呑む横で、太一は冷静に状況を分析する。


「俺なんかより、自衛隊の衛生兵でも呼んできた方がいいんじゃないか……?」


 そこへ、軍服を着たメディックが太一にぶつかった。


「おい、邪魔だ! ……ん? 貴様ら、ヒールを使えるな? レベルは低そうだが、付いてこい!」


「れ、レベルが低いとは何事か! あたしはこれでもヒーラーの神――」


「神だと? ここに神なんていると思うか! ごたくはいい、さっさと来い!」


 強引に連れて行かれたのは、城の近くにある施設だった。そこには比較的軽傷と診断された兵士たちが集められている。


「貴様らでも治せる程度の連中だ。さっさと治して前線へ送り出せ!」


「……ッ! 前線だって?」


「急げ! そのうちここを戦場にしたくなければな!」


 太一とアマリアは、施設の門を潜った。そこには屈強な男たちが、包帯を巻きながら苦悶の表情で横たわっている。


「この程度の傷なら、確かに治せるか」


「ふん、あたしはもっと重症でも治せるわよ!」


「そんなこと競ってる場合かよ」


 太一は一人目の騎士の診察を始めた。右前腕に巻かれた包帯を外す。皮膚に裂傷は見られないが、ひどく腫れ上がり、内出血を起こしていた。


「……ヒール」


 太一が呪文を唱えると、内出血はみるみる引き、腫れも落ち着いていく。それを見た施設の将校が、騎士の腕を強引に掴み上げた。


「よし、傷は治ったな! さっさと剣を取れ、前線へ戻るんだ!」


「い、いでええええ!!」


 騎士が絶叫する。 


「なんだ! 見た目は治っているだろう! 根性を見せろ!」


「太一のヒールでは治りきっていないようじゃな。任せよ!」


 アマリアがヒールの上位魔法『ヒアリル』を放つ。輝かしい光が騎士を包み込んだ。しかし、光が収まった後、再び将校が腕を掴むと、騎士はやはり激痛に顔を歪めた。


(これは……)


 太一は騎士の腕を手に取り、痛みのポイントを慎重に探る。


「……右前腕橈骨とうこつ骨折か。将校さん、この患者さんは骨が折れています。ヒールで筋肉の損傷や皮下出血は治せましたが、魔法だけでは骨折まで完全には治せなかったようです」


「待てない! 二週間もすれば前線は突破されるんだぞ!」


「ですが、このまま戦っても犬死にですよ。利き腕の骨折で剣が振れますか?」


「ちっ……ならどうしろと言うんだ」


 太一はケアマネとして、そして現場を知るプロとして代替案を提示した。


「一週間は三角巾で固定し、安静に。二週間後から少しずつ生活の中で腕を動かしましょう。スクワットくらいなら今でも可能です。鍛えておいてください」 


「鍛えるだと?」


「ええ。滑車とロープと岩を使って、簡単なレッグプレス(足腰の訓練機)を作ります。一週間後にはトレーニングができるようにしておきますから」


「ふん、なんたる軟弱な!」


 将校はつまらなそうに鼻を鳴らし、その場を去っていった。


 残された騎士が、太一に深く頭を下げる。


「助かった……。あのまま前線に放り出されたら、俺は間違いなく死んでいたよ」


「……一体、前線はどうなっておるのじゃ?」


 アマリアの問いに、騎士の身体が目に見えて震え出した。


「俺もあちこちの戦場に出たが、こんな恐ろしい戦争は初めてだ。あんたらも……えらいところに来ちまったな……」

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