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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
ダメな女神と不運な男

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第2話 ヒーラー二人の夜明け

第2話 ヒーラー二人の夜明け

 闇夜に放り出された太一とアマリアを待っていたのは、フクロウの鳴き声が不気味に響く深い森であった。


「お、おい。俺を前に出すなよ。ヒーラーは後衛が定石だろ?」


「あたしもヒーラーよ! 男子ならそこらの棒切れでも持って戦いなさいよ!」


 アマリアの無茶苦茶な言い分に呆れる太一。その時、茂みがガサガサと不穏な音を立てた。


 震えるアマリアが、ひときわ高い声を上げる。


「や、やばい……。女神最大の敵、アンデッドよ!」


 暗闇からガチャガチャと鎧を鳴らし、腐敗臭を放つ怪物が姿を現した。


「グエェ! 汚ねぇ! 出たあ! イヤーッ!」


「どうするんだよ! 戦いなんて……っ!」


 太一の躊躇をあざ笑うかのように、アンデッドの爪がその身を切り裂いた。


「いてぇ! おい、なんとかしろよ! 女神なんだろ!?」


「だからあたしはヒーラーだってば!」


 混乱の中、太一は半ば破れかぶれで右手を突き出した。


「ええい、とりあえず……ヒール!!」


 太一の手から放たれた聖なる光が、アンデッドを包み込む。


 シュワアアアー、という浄化の音が響いた。


 すると、醜悪な怪物の背後に、かつて人間だった頃の気高き騎士の幻影が浮かび上がった。騎士は安らかな笑顔を浮かべ、涙を流しながら霧散していく。


「お……」


「な、な……。やるな、太一よ」


 呆然とするアマリアに、太一は冷静にツッコミを入れた。


「女神様? アンデッドにヒールが特効なんて、基本中の基本だろ。知らなかったのか?」


「し、知るかー! こんな現場に来たこともないし、女神が戦うわけなかろう!」


 どうやら、敵を倒したことで太一のステータスに変化があったようだ。


「よし……今のでレベルが上がった。初期設定が低いから上がりやすいのか。とりあえず、ここのアンデッドを狩りまくってレベルを上げておくぞ。手伝えよ、アマリア!」


「くっ……女神を呼び捨てにするなど……。彼氏にさえ呼ばれたことはないのに! 居たこともないけど!」


 太一は新たに『リジェネ』のスキルを習得した。自動回復を付与しながら戦えるようになった二人は、ようやく森を抜け、一つの街へと辿り着く。


 街の宿屋へ向かう道中も、アマリアの不満は止まらない。


「ひええ……く、くせえ……。女神をこんな不浄な場所に連れてくるとは。やはりお前を地獄へ送っておけば良かったわい!」


「ひでぇな! 俺だって好き好んでここにいるわけじゃ……!」


 夜中の口喧嘩に、街の窓からポツポツと明かりが灯る。


「静かにしろって!」


「太一こそ!」


 宿屋に駆け込んだものの、空室はわずか一部屋であった。魔王軍との前線が近く、街は冒険者や傭兵、騎士団で溢れかえっているという。


 狭い部屋で、アマリアは太一を鋭く睨みつけた。


「太一……お前はこれまで女子を泣かせてきた前科がある。間違っても女神に手を出すなよ。その時は本当に……」


「あーあー、うるせえ! もう寝かせてくれ。車に跳ねられ、ゾンビと戦い、変な女神に付きまとわれ……もう限界だ。おやすみ……」


 太一は泥のように眠りについた。

 しかし、翌朝。目覚めた二人が街の様子を目にした時、その表情は驚愕に染まることになる。

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