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第31話 デモンズウォールと聖水の絆

第31話 デモンズウォールと聖水の絆

 ヴィネは玉座からゆっくりと立ち上がり、侵入者たちを冷酷に睨み据えた。

 お付きの魔物は多勢に無勢を悟って後退りするが、ヴィネ自身には、未だ底知れぬ余裕が漂っている。


「私は、この一夜城から敵軍が壊滅する様を見下ろすのが快感でなあ……」


「べえっ、なんたる悪趣味。せっかくの美人が台無しじゃぞ!」


 アマリアの毒舌を、ヴィネは鼻で笑い飛ばす。

「ふん、なんとでも言え。魔王様が復活して以来、その楽しみで身悶えする日々よ」


 その時、太一が静かに口を開いた。


「……なあ。共にこの異世界で生きる道は、選べないのか?」


 ヴィネのみならず、リンやローザまでもが「何を言い出すんだ」という表情で太一を見る。


「俺は魔王も異世界もまだよく知らん。だが、生き死にはもう御免だ。死ぬのを待つより、元気にしてあげて、生きたい。そうは思わないか?」


「おかしなことを言う勇者様だこと……」


 ヴィネはたまらず笑い出した。


「それは私に言われても困るな。魔王様との契約がある。人間を一人残らず消せ、とな」


「そうか。……話し合いは決裂だな」


 太一の合図で、リンとローザが剣を構え、リュックが弓を引き絞った。


 ――ッタ!!


 二人の騎士が飛びかかり、同時に後方から一直線の矢が放たれる。


 しかし。


「ゴゴッ……『デモンズウォール』!!」


 ヴィネが叫ぶと、巨大な魔法陣から禍々しい「悪魔の壁」が出現した。壁は凄まじい圧力を伴い、一行を押し潰さんと迫り来る。


「さあデモンズウォールよ! 奴らをミンチにせよ!」


「ちっ、『ファイア』!」


 ローザの放った炎は壁に吸い込まれるように消えた。魔法が効かない。リンが渾身の斬撃を加えるが、壁の進行は止まらない。


「まずい……後ろがないぞ!」


「ライブラで弱点を探る! ……聖なる力に弱い! 聖属性は!?」


「一番近いのはアマリア様ですが!」


 リンの叫びに、アマリアは顔を引きつらせてモゴモゴと口ごもった。


「……聖属性は、その、ライセンスの更新を忘れておってな。今は難しいのじゃ……」


「おい! 本当にただの回復被りじゃないか、俺と!」


 絶体絶命の瞬間、リュックが声を上げた。


「太一様! 僕の聖水を! 数が少ないので、太一様の『ウォーター』で広範囲にデバフを広げてください!」


「よし、今だリュック! 投げろ!」


 リュックが投げた聖水の瓶が砕け散る瞬間、太一の『ウォーター』がそれを包み込み、激しい奔流となって壁全体へとぶち当たった。


「ザバァ!!」


 聖なる水に触れたデモンズウォールが、嘘のように崩れ落ちていく。


「な……馬鹿な、デモンズウォールがただの聖水で!?」


「僕は冒険者だよ。ただの聖水だと思うのかい?」


 リュックが不敵に微笑む。残るはヴィネ、ただ一人。


「太一よ、ライブラで奴を丸裸にして晒してやれ!」

「くっ……この変態め! お前に覗かれるくらいなら……一時退却だわ!」


 ヴィネは忌々しげに叫ぶと、霧のように姿を消した。


 同時に、外からも勝利の雄叫びが聞こえてくる。ドリアル正規軍と冒険者たちが、誘い出した魔王軍を見事に殲滅したのだ。


 一夜城の頂で、太一たちは確かな勝利を噛み締めていた。

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