第27話 魔女ヴィネの一夜城
第27話 魔女ヴィネの一夜城
「ふふふ……このような出城如きにメフィストフェレスの奴、手こずっておったか。父上である魔王軍大幹部、ゲオルク博士もお嘆きになろう」
野戦病院を冷徹な目で見下ろす者がいた。魔王軍の新たな幹部、ヴィネである。
「ヴィネ様、総攻撃の支度、整いました」
「さあ、攻城戦の真髄とくと見せてくれよう。とはいえ、ここの守備はヒールの女神一匹か。妾の相手としては不足だのう」
その頃、砦の中ではアマリアが盛大に鼻を鳴らしていた。
「ブエクシュ! 誰かがあたしの噂をしておるな。あまりにも神々しい女神様だと崇めておるのじゃろう。さあ皆、元気よく守るのじゃ!」
鼓舞するアマリア。しかし、闇に潜むヴィネの冷笑が、その空元気をあざ笑っていた。
「ふふふ……その空元気、いつまで保つかしら?」
馬よりも早く、一足先に『ヘイスト』を付与されたリュックが砦の目前まで戻ってきた。しかし、野戦病院を包囲していたヴィネの配下たちがその影を見逃さなかった。
「待て! 貴様、なんて速さだ!」
「へへーん! 捕まえてごらんよ。それ、弓の三連射だ!」
目にも止まらぬ速さで放たれた三本の矢が、敵兵の急所を貫く。
「グヘェっ!」
「奴はまさか、メフィストフェレス様の陣から来たのでは? 何かあったのか! 直ちにヴィネ様へ報告せよ!」
リュックは包囲網を潜り抜け、間もなく太一たちが戻ることをアマリアへ報告した。
「そ、そうか! でかしたぞリュック! 皆の者、間もなく太一が援軍を引き連れて戻ってまいるぞ!」
その報告は、敵の指揮官ヴィネの耳にも届いていた。しかし、彼女の余裕は微塵も揺るがない。
「ふふふ、それがどうしたというのだ」
ヴィネは不敵に微笑み、その権能を解放した。
「妾の権能を見せてやろう。奴らが必死に築いたかの出城の目の前に、さらなる城を築いてやろうではないか。……かぁああ!!」
一夜にして、野戦病院を見下ろす高台に、重厚な煉瓦造りの城が姿を現し始める。ヴィネの権能『一夜城』であった。この新城は、防衛側の士気を挫くには十分な威容を誇っていた。
「アマリア様……! 敵の攻撃は散発的ですが、皆傷つきながらもよく守っております!」
「こりゃ太一たちが戻る前にカタがつきそうだな!」
余裕を見せるアマリア。
しかし、この敵城を前に、太一の帰還を待つ防衛線は、かつてない絶望の影に覆われようとしていた。




