第26話 神の権能とリュックの秘密
第26話 神の権能とリュックの秘密
野戦病院の指揮所から飛び出したアマリアと弓使いのリュックの前に、絶望的な光景が広がっていた。
「アマリア様……! かなりの数の魔物が迫っています!」
弓を引き絞りながら、リュックは隠しきれない動揺に声を震わせる。
「ううむ! だが必ず助けは来る。皆、太一を信じて戦ってくれ!」
とはいえ、動ける兵のほとんどは魔王軍本陣への奇襲に向かっており、ここに残っているのは傷の癒えぬ怪我人ばかりであった。
「よおおおーし! こうなったら見せてやるわい!」
「アマリア様!?」
「数少ない、回復の神としての権能をな! まずは状態異常耐性、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、そして即死耐性付与じゃ!!」
アマリアの小柄な身体が神々しい黄金の光に包まれる。
「おおおお、これは……!」
守備隊の兵たちが期待の眼差しを向けたが、次の瞬間、彼らは顔を見合わせた。光に包まれているのはアマリア一人だけだったからだ。
「……ん? 何か、俺たちに変化はあったか?」
「まずは神からに決まっておるじゃろがい! あたしが死んだら誰が回復するというのよ!」
開き直った女神は、続けてリュックを指差した。
「リュックには『ヘイスト』を付与する! さあ、全力で援軍を呼んでまいれ!!」
「了解です! ……うわ、めちゃくちゃ足が速くなった! 行くぞー!」
リュックを送り出した後、アマリアはようやく残った兵たちにもバフを付与して回った。
「存分に戦うのじゃ! 命を大事にな!」
その頃、驚異的な速度で魔王軍陣地へと走っていたリュックは、前線から戻る軍の先頭集団と鉢合わせた。
「あ! 皆様! ドリアル様!」
ドリアルは、太一を馬の後ろに乗せて先頭を駆けていた。馬から飛び降りる太一に、リュックが叫ぶ。
「冒険者のリュックです! 野戦病院が襲撃されました! アマリア様からの援軍要請です!」
「やはり来たか。ありがとう、リュック!」
太一は感謝を込め、リュックの胸元をポンと手のひらで叩いた。その瞬間、皮の鎧の下にある、小さくとも確かな弾力が太一の手に伝わった。
「ひゃっ!?」
リュックが聞いたこともないような可愛らしい声を上げ、頬を赤らめる。
「え、女の子……?」
ボーイッシュな身なりに帽子を深く被っていたため、太一は今の今まで彼女を男だと思い込んでいたのだ。
「や……やはりあなた様は、アマリア様の仰る通りの方でした……!」
潤んだ瞳で太一を見上げるリュック。
(ああ、あの娘……なんと贅沢な体験を……!)
その光景を見ていたローザは、鋭い眼光をより一層鋭くし、激しい羨望を滾らせていた。




