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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
包囲を突破せよ!

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第23話 魔軍の軍師メフィストフェレス

第23話 魔軍の軍師メフィストフェレス

 闇夜を切り裂き、リンとローザ率いる百名の決死隊が、魔王軍の本陣へと急行していた。


 その頃、遠方のドリアル城では、守備隊が野戦病院に灯る異常な数の篝火に気づいていた。報告を受けたデル・アポロ中尉が、即座に城主ドリアルへ進言する。


「不自然なほどの篝火が見えます! これは太一殿が、何らかの勝負に出る合図ではないでしょうか!」


「……うむ。レーションが底を突く頃合い。座して死を待つ男ではあるまいな。よし、こちらも余勢を駆って打って出るぞ! 此度は私も出陣する!」


 ドリアルは重厚な甲冑に身を固めた。かつて騎士として名を馳せた男の眼光は、単なる酒好きのそれではない。


 一方、包囲網の中心に鎮座する魔王軍指揮官、メフィストフェレスは空気が変わる瞬間を敏感に感じ取っていた。


「ふ……来るか。まさか我が魔獣ゲルゾラーダを討ち取る人間が現れようとはな。まあ、あんなものはただの泥人形に過ぎん。さあ来い……見せてみよ、貴様らの足掻きを」


 その時、野戦病院内では、太一がソワソワと落ち着きなく行き来していた。


「うう……あ、あたしの……ことは……いい……構わず行ってくれ……」


 横たわるアマリアが、枯れ木のような声で絞り出す。


「そうか? よし、無理はするな。しんどくなったら迷わず『ヒアリル』で自分を回復させろよ!」


「……おい、本当に行く奴があるか……」


 太一はアマリアの静止も聞かず、リンたちの後を追って砦を飛び出した。


 リンとローザの決死隊は、魔王軍の喉元、メフィストフェレスの指揮所まであと一歩の距離に肉薄していた。そこには、一際禍々しい闘気を纏う、知的な風貌の悪魔が立っていた。


(ローザ、あれが……?)


(おそらく。奴がこの軍の指揮官、メフィストフェレスかと……)


(ふ……バレバレだよ、人間たち)


 悪魔が嘲笑を浮かべた瞬間、リンとローザが同時に跳ねた。


「「おおおお!!」」


 一気に乱戦へと持ち込む。不意を突かれた魔物たちが狼狽える中、指揮官の怒号が響く。


「狼狽えるな、馬鹿者共!」


 メフィストフェレスの眉間に、ローザのレイピアが肉薄する。しかし、手応えはない。


「後ろだ、ローザ!」


 リンの叫びに合わせ、背後の空間へ斬りかかるが、それも残像に過ぎなかった。


「しまった、奇襲失敗だ……!」


「リン! このまま力ずくで奴を討ちましょう!」


「やるしかないか!」


 二人は左右から凄まじい連撃を繰り出すが、メフィストフェレスは羽虫を払うかのように、すべての攻撃を軽やかに躱していく。


「美しいお嬢様方。その程度では、この私に指一本触れることはできませんぞ?」


 メフィストフェレスは優雅に手を掲げた。


「さあ……我が父、ゲオルク博士の開発した泥人形どもと戯れるがいい!」


 地の底から次々と不気味な魔族が這い出し、決死隊を包囲していく。


「ふははは! 貴様らの首、魔王様への良き手土産としてくれよう!」


 勝利を確信した悪魔が哄笑した、その時である。後方から激しい地響きと共に、新たな鬨の声が上がった。


「……ん? ちっ、増援か? まさかこの包囲網を抜けて伝令を送っていたというのか?」


「伝令など! これはドリアル城の皆が気づいてくれたのですわ!」


 ローザが誇らしげに叫んだ。夜の荒野に、二つの軍が激突する轟音が響き渡る。

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