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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
包囲を突破せよ!

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第22話 決死の打通作戦

第22話 決死の打通作戦

 備蓄していた糧食レーションがいよいよ底を突いた。野戦病院内では、極限状態に追い詰められた兵士たちによる水の奪い合いが各所で発生し始めていた。


「……打って出るしか、ないようですね」


 美しい黒髪を揺らし、リンが静かに、しかし断固とした口調で言った。


(それしかないのですか、太一様……!)


 ローザもまた、鋭い視線を太一へと向ける。


 太一は疲弊した体を引きずりながら、新鮮な水だけは切らさぬよう、兵士たちの水筒に魔法で水を入れて回っていた。隣では、アマリアが幽霊のようにやつれ果てている。


「ほおおおい……太一よ……あたしゃもうダメじゃ……。女神が餓死するなど、前代未聞の不名誉じゃぞ……」


「諦めるなアマリア。今が正念場だ」


 施設内には、栄養失調で動けなくなる者が続出していた。太一は一人一人の状態を素早くアセスメントしていく。


「……これはひどい。脱水から肺炎を併発している。熱も高いな。こっちは尿路感染症だ……」


 薬も、まともな食事もない。このままでは救助が来る前に、内部から崩壊してしまう。


「戻った伝令の話では、ドリアル城側も物資供給を一度白紙にし、この中間地点に陣取る魔王軍を討伐すべく大規模な軍を動かす予定だそうです」


 ローザの報告を聞き、太一は賭けに出る決意を固めた。


(タイミングさえ合えば、前後からの挟撃が可能だ。だが、一歩間違えれば各個撃破される……)


「よし。今晩、砦の篝火を可能な限り焚け。城兵が健在であることを派手にアピールするんだ。その裏で、奇襲をかける。ドリアル城がこの動きを察知して呼応してくれれば……。このタイミングで包囲網を突破できなければ、俺たち五百の兵は全滅だ」


「やるしかありませんね」


 リンが腰の剣を握りしめ、覚悟を決める。


「大丈夫か、リン」


「ええ……少しお腹は痛みますが、やれます。やらねばなりません」


「ふん。今晩の決死隊の突撃次第で、未来を掴むか全滅か……。分かりやすくていい。行きましょう」


(素晴らしいアイデア……流石はイエローハートの太一様。ですが、かなり分が悪い賭けですわ。だからこそ、私が……!)


 ローザもまた、内心の昂ぶりを押し隠してレイピアを抜いた。


「よ、よし……やる、かあ……」


 ゲソゲソになったアマリアも、重い腰を上げる。


「太一殿、アマリア様は城で看病を。動ける者を引き連れて私が打って出ます。ローザ、行くわよ!」


「ふん。遅れをとるな、アーメリアの騎士よ」

(誰も死なせませんわ! この白銀のレッドスコーピオンことローザ様が、太一様のためにこの包囲を突破して見せます!)


 太一は全魔力を絞り出し、リンとローザに「リジェネ(継続回復)」の魔法を付与し、その能力を限界まで強化した。


「頼むぞ。このままじゃ確実にここはパンデミック(感染爆発)で溢れかえる。……生き残って、飯を食うぞ!」


「行くぞ!!」


「「おおおおお!!」」


 飢えた獣たちの如き咆哮が、闇夜の荒野に響き渡った。

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