第21話 音を立てぬ包囲網、兵糧攻め
第21話 音を立てぬ包囲網、兵糧攻め
野戦病院の築城から数日間、魔物の群れの攻撃は拍子抜けするほど散発的なものとなった。
「太一よ! あたしたち、よく凌いでいるではないか。このまま魔王軍の拠点まで攻め上がれるのではないか?」
アマリアが楽観的な声を上げ、リンも「ええ、敵も諦めたのかもしれません」と手応えを感じていた。
しかし、侵攻初日から戦い続けてきたローザだけは、鋭い視線で東の空を見つめていた。
(確かに太一様とちんちくりん(女神)が来てから壊滅することはなくなった。しかし、奴らの力はこんな程度なのか……?)
さらに数日が過ぎ、ドリアル城の総合施設建築の報が届く。だが、その直後から異変が起きた。
野戦病院への物資供給が滞り始めたのだ。毎日来ていた伝令も、ぱったりと姿を見せなくなった。
「おい、レーションが底を突き始めているぞ。水も不足しておる……」
アマリアの顔は、数日前とは打って変わって栄養不足でげっそりとしていた。
「少し、痩せましたわね……」
リンがふくよか豊満ボディを悪気なく見せつけると、ローザの眉間に青筋が浮かぶ。
(くっ! この騎士様、ここぞとばかりに太一様へのアピールを!?)
「ええ……私も、少し痩せすぎてしまいましたわ」
「そなたは元々それくらいの『サイズ』だったであろうが」
頬のこけたアマリアに指摘され、白銀髪のローザがキッと彼女を睨みつけた。
太一はこれまで現世で培ってきた経験から、リスク予測を働かせる。
「物資、食料、水が滞る……籠城中にこれが起きるということは、まずいぞ。魔王軍には、知識のある軍師がいる」
「ど、どういうことじゃ太一よ?」
「これは……『兵糧攻め』だ。餓死殺しだよ」
「兵糧攻め? 初めて聞く作戦だな」
リンとローザが顔を見合わせる。太一は苦々しく説明した。
「城の周りを包囲して、物資の供給を断ち、城兵を飢えさせる残忍な作戦だ」
「な、なんと……! このままではうら若き我らが干からびてしまうではないか!」
アマリアが叫ぶ。すぐに伝令を出してドリアル城へ援軍を要請すべきだが、すでに出した伝令が戻っていないことが答えだった。
「は、腹が減る。酒でも飲むしか……」
アマリアが酒瓶に手を伸ばすが、太一が厳しく止める。
「やめとけ。栄養失調を起こしかけている体で酒を飲めば、脱水とアルコール中毒を招くぞ」
そこへ、一人の伝令が命からがら、ボロボロの姿で戻ってきた。
「太一殿……! 予想通り、野戦病院とドリアル城の中間に魔王軍が押し寄せていました。物資運搬隊は……壊滅です」
太一はさらに先を読む。
「ドリアル城とここの兵で挟撃させ、野戦病院を孤立させる。俺たちを飢えさせてから炙り出し、手薄になったこの砦を焼き払うつもりだ」
「……どうする、ゼロ攻コンビよ?」
ローザが鋭い視線を太一に向けた。
(ああ……このイエローハート勲章のマネージャー太一様なら、きっとここから連れ出してくださる。信じておりますわ!)
絶体絶命の兵糧攻め。攻撃力を持たぬ太一に、この危機を脱する手立てはあるのか。




