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第20話 野戦病院の完成

第20話 野戦病院の完成

 敵の夜襲を見事に防ぎ切った野戦病院の面々。届けられた糧食レーションと酒が、五百名の騎士や冒険者たちに行き渡った。


 野戦病院の指揮所で、太一、アマリア、リン、ローザの四人はようやく一息ついていた。運ばれてきた酒を一口飲んだ太一は、思わず声を漏らす。


「う、美味い……!」


「そんな美味い酒は飲んだことがなかろう? 我が主ドリアルは、酒造りの功績を認められてフランシア帝国から城を賜ったほどなのだ」

(ああ、ようやく太一様とゆるりと酒を酌み交わせますわ……)


 ローザが陶酔した表情を浮かべる横で、リンも自慢の黒髪ポニテを揺らしながら杯を空けた。


「確かに美味い……! プハァー、これは顔が赤くなりますね」


 そんな様子を、アマリアだけがジト目で見ていた。


「どうされましたアマリア様? 美味しいお酒ですよ?」


 リンの勧めに対し、アマリアは唇を尖らせて答えた。


「……飲めん」


「え?」


「飲むとひっくり返ってしまうのじゃ」


「なんと、お子ちゃまな……。見た目通りの女神様ですわね」

(太一様も呆れておられますわ!)


「まあまあ、誰にでも苦手はあるさ。なあ、アマリア?」


 太一がフォローを入れると、負けず嫌いなアマリアが意を決して杯を掴んだ。


「……そこまで言うなら、一口だけじゃ! グビグビ……っ!」


 一気に飲み干した数秒後。


「ヒック……おお、酒が回る回る。メリーゴーランドじゃあああ!」


 翌朝。


 飲み過ぎた面々は、太一を真ん中にして、左右に腕枕をされたリンとローザ。そして、あろうことか太一の股間を枕にしたアマリアが折り重なって眠っていた。


(ね、寝苦しい……)


 最初に目覚めた太一は、股間の重みに冷や汗をかく。


「お、おいおい、アマリア……お前、誰のどこを枕に寝てやがる……?」


「ウゥーン……城を枕に総員討ち死に覚悟で……突撃……ウウ……」


 アマリアが寝言と共に目を開けた。


「はっ! ……な、何たる事! あたしは何故こんな『モノ』を枕に!? 起きろリン! ローザ! 朝だぞ! こやつ、やりおった! またしても女の子を……グスン、泣かせおったああ! うわーん!」


 飛び起きて泣き喚くアマリアの声に、二人も目を覚ます。


「ハッ! これは破廉恥な……っ!」


 リンは慌てて上着を整えたが、ローザだけは微睡みの中にいた。


(……私はもう少しこのままで……)


「何もやってないって。俺は酒に呑まれるほど弱くないんだよ」


 太一が溜息をつきながら表に出ると、そこにはあらかた完成した野戦病院の威容があった。


「おお! マネージャーの太一様と、回復の女神アマリア様だ!」


 そこにいたのは、彼らに命を救われた城兵や騎士、冒険者たちであった。


 沸き起こる大歓声。しかし、アマリアは泣き叫んでいたせいで目が腫れぼったく、およそ女神らしからぬ顔であった。


 築城の歓声に沸く騎士たち。だが、この完成したばかりの野戦病院が、さらなる泥沼の戦場と化すことを、今はまだ誰も気づいていなかった。

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