第17話 火傷の救護所と白銀の救軍
第17話 火傷の救護所と白銀の救軍
リンとローザ准尉は、増援の騎士や冒険者の中から、野戦築城に向けた人足の選別を急いでいた。
救護施設将校のデル・アポロ中尉も、軽傷者を指揮して物資運搬の体制を整えてくれた。
集まったのは総勢三百名。
「よし、これだけの兵力がいれば、築城物資を運び切れる! 前線ではイエローハート勲章の太一殿が敵の侵攻を食い止めてくれているのだ。皆、急いで援軍に向かうぞ!」
騎士リンの凛とした掛け声に、増援部隊の士気が一気に跳ね上がる。
(嗚呼、この軍を引き連れて前線に現れたら、太一様はどれほどお喜びになられるか……!)
ローザは鋭い眼光の裏で、白銀の髪をなびかせながら妄想に身を焦がしていた。
一方、前線は泥沼の様相を呈していた。
まともな施設もないぬかるみの中で、あちこちに動けなくなった騎士たちが転がっている。
「太一! 酷いぬかるみじゃ! あたしの衣装が泥だらけではないか!」
「俺だって嫌だよ! 早く屋根のあるところで働きたいんだ、こっちは!」
そこへ、前線の伝令が飛び込んできた。
「太一殿! 敵の第三波、来ます!」
「俺たちはここに仮設の救護所を設置する! 負傷者を運び込んでくれ!」
「やるしかないのう! ドンと来いや!」
アマリアも泥にまみれながらハチマキを巻き、気合を入れ直す。
押し寄せる魔物の波を、騎士団と冒険者が必死に食い止めていた。しかし、その防波堤が一際大きな絶叫と共に決壊する。
「あ……新手だ! 灼熱の火炎を吐く、真っ赤なドラゴンだぞ!」
「あわわわ! 太一、やべえのが来たぞ!」
「アマリア! 火傷の患者が運び込まれる。俺の『ヒール』と『ライブラ』じゃ火傷までは追いつかない。特効魔法を頼む!」
「火傷に効く魔法だと? ……回復の女神を舐めるな! 『アロエイド』!!」
火傷の治癒と耐性付与を同時に行う、アマリアの特殊魔法が発動する。
「よし、火傷を治したら、俺のヒールで体力を戻して前線へ送り出すぞ!」
だが、ドラゴンの火炎は苛烈を極めた。救護所は一瞬にして火傷の重症兵で溢れかえる。
「まずい、間に合わない!」
無情にも、ドラゴンは標的を救護所へと定めた。真っ赤な喉元が発光し、紅蓮の炎が溜まっていく。
「来たあ! もうダメだ、救護所を狙うのは条例違反だろー!!」
アマリアの叫びが虚しく響く。
(くっ、ここまでか……!)
太一が覚悟を決めた、その時であった。
後方から凄まじい勢いで飛び上がる影があった。
鋭い一撃がドラゴンの眉間を正確に捉え、巨大な巨体を力任せに後退させる。
同時に、太一たちの前にも一人の影が降り立った。
「あ! リン、ローザ!」
「お待たせしました、太一。アマリア様!」
「ふん。お前たち、怪我などしていないだろうな。攻撃力ゼロなのだ、無理をするな」
(これ以上ない最高の演出が出来ましたわ! 私は格好良かったですか!? ねえ、太一様!!)
絶体絶命の窮地。太一の「現場」に、頼もしすぎる仲間たちが合流した。




