第18話 野戦築城と日曜八時の知識
第18話 野戦築城と日曜八時の知識
「リン! ローザ! 助かったよ!」
太一の安堵の声が響く。しかし、戦場に息をつく暇などなかった。
「我々も敵の侵攻を防ぎます!」
リンが鋭く叫び、剣を構える。
隣ではローザが、白銀の髪をなびかせながら不敵な笑みを浮かべていた。
「ゼロ攻コンビよ、私の戦いぶりをとくと見ておくがいい!」
(さあ……私の勇姿をお見せしますわ!)
ローザが弾丸のような速さで戦場へと飛び出していく。
「増援と物資がもうすぐ届きます。私たちが敵を食い止めている間に、築城を!」
「ああ、頼むよ、リン!」
「おおっと、火傷耐性のバフじゃ! 行ってまいれ!」
アマリアがリンに聖なる加護を授ける。
「ありがとうございます、アマリア様!」
加護を得たリンが戦場へ向かうのを見送り、太一がふと気づく。
「おいおい、ローザには?」
「あやつ、ちょっとあたしを見下しておるからのお……。少しは身に沁みればよいのじゃ」
数分後。
「うぁっちゃああああ!!」
戦場から、普段の冷静沈黙な面影はどこへやら、火傷を負ったローザがのたうち回りながら転がり込んできた。
「おい、アマリア! 助けてやれよ!」
「あらら、本当にやられおったわ。……仕方ない、アロエイド!!」
アマリアの魔法が炸裂し、ローザの皮膚が瞬時に再生する。
(くっ……小娘! 私に借りを作らせたな、それも太一様の前で!)
ローザは内心で地団駄を踏みながらも、表面上は冷静を装って再び最前線へと繰り出していった。
やがて、後続隊が次々と物資を運び込んでくる。
「太一殿! 全物資、到着しました!」
救護施設将校デル・アポロ中尉が、泥にまみれながら物資運搬を指揮していた。
「よし! まずは柵を張り巡らせろ! 土塁と堀を急げ!」
「滑車を使って門を作ります! 動線を確保して!」
的確な指示を飛ばす太一の姿に、アマリアが感心したように目を丸くする。
「なんだ、太一。そなた、城作りでもしたことがあるような指揮ぶりじゃな?」
「ふん、大河ドラマで見たんだよ!」
「なるほど……。日曜八時に外で遊ぶような真似はせんか、そなたは!」
インドア派が培った映像の知識が、異世界の泥沼の戦場で現実の壁へと変わっていく。
前線野戦病院――通称「太一の出城」が、その産声を上げようとしていた。




