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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
救護施設をグレードアップせよ!

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第15話 帝国の決断

第15話 帝国の決断

 フランシア帝国の中心、皇帝陛下が座す中央都市へ一行は足を踏み入れた。


 太一は宿に入るなり、翌日の謁見に向けてプレゼン資料の整理に没頭した。その様子をローザが不思議そうに覗き込む。


「太一様、何をなされているのです?」


「明日、限られた時間で皇帝を納得させるための資料を作っているんだ。『施設を作りたいから金を出せ』なんて言い方じゃ、貴重な税金は投入してもらえないからね」


「なるほどのお。なら、神であるあたしを崇めぬと天罰を下すぞ、と皇帝を脅してみようかしらの?」


「ふん、ちんちくりんの神を誰が有り難がるというのだ」


 ローザがビシッと言い放つと、アマリアは顔を真っ赤にして叫んだ。


「何おう! これでも将来はナイスバディに……リンよりも育ってやるわい! 見ておれよ、太一!」


「……いいから、静かにしてくれ」


 太一の冷ややかな一言が、夜の更ける部屋に響いた。


 翌日。豪華絢爛な謁見の間には、皇帝陛下をはじめ帝国議会の重鎮たちが居並んでいた。四人が入室し、まずはローザ准尉が鋭い敬礼と共に口火を切る。


「皇帝陛下、ドリアル城所属ローザ准尉です! 謁見の栄誉、預かり光栄に存じます。こちらは初陣でイエローハート勲章を授与された太一殿、女神アマリア、そしてアーメリアの騎士リンです!」


「表を上げよ、勇者たちよ。此度はよくぞ前線から参られた。何やら余に奏上したい儀があるとか」


 皇帝の促しを受け、太一が一歩前へ出た。


「はい。現在、前線はまさに地獄です。ヒーラーの不足、救護所の劣悪な環境、そして何より戦争の後遺症である『PTSD』を患う兵たちに、まともなケアが行き届いておりません。総合的な救護施設の建設は急務です」


 太一は議場を見渡し、言葉を継ぐ。


「この戦争は長期化します。勝ったとしても、後遺症で働けなくなる者が増えれば、子育ては滞り、帝国の経済は停滞するでしょう。そこで私は、ここに『国民皆保険制度』の設立を提案します!」


「ホケン……だと?」


 議会の面々が不思議そうに顔を見合わせる。


「健康な時に国民から少しずつ税を徴収し、働けなくなった者や傷ついた者をその資金で治療する制度です。また、親が働けなくなった際の子育て支援もその枠組みで行います」


「なるほど。国民全体で弱者を保護する仕組みか」


「その通りです。病院もその資金で建てるのが宜しいかと。急性期病棟、療養病床、そしてリハビリ施設を統合した『帝国立病院』を建設するのです」


「リハビリ……。そなたが前線で兵を休息させ、訓練を施したというアレか」


「はい!」


「ふむ……。皆の者、どう思うか」


 一人の議員が挙手し、懸念を口にする。


「反対はないが、兵をそれほど悠長に遊ばせていては、資金がいくらあっても足りぬのではないか?」


「もちろん、全額公費ではありません。費用の七割を制度から、残り三割を自己負担としてもらいます。自らも痛みを分かち合うことで、制度の乱用を防ぐのです」


「なるほど、自腹も切らせるわけか……。面白い」


 太一はさらに追い打ちをかける。


「併せて、ここの道中にあったラスクには心を病んだ者たちのための精神科施設を建設してください。彼らは英雄です。戦って傷ついた心を癒やす権利があります!」


 皇帝は重厚な沈黙の後、力強く頷いた。


「……良かろう。異議なし! 直ちに前線への施設建設、ならびにラスクの精神保護施設の設立を命ずる!」


 ケアマネジャー天城太一の放った一石が、異世界の国家体制を大きく動かした瞬間であった。

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