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スキルが「ヒール」で被った女神と俺。攻撃手段ゼロの異世界ケア ~「治ったから戦え」はブラックすぎます。まずはリハビリ3ヶ月、ADLの向上から始めましょう~  作者: A古町
救護施設をグレードアップせよ!

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第14話 心の傷と不夜の治癒

第14話 心の傷と不夜の治癒

 翌日、再び馬車に揺られて進んだ一行は、夜、フランシア帝国本土とドリアル城の中間地点に位置する街、ラスクへと到着した。煉瓦造りの街並みが美しく、近くを流れる川のせせらぎが心地よい、風光明媚な街である。


「やっと枕を高くして寝れるぞー!」


 歓喜の声を上げ、アマリアが宿屋を探し回る。ようやく見つけた大規模なホテルに期待を膨らませたが、フロントで突きつけられたのは非情な現実だった。


「四人部屋になります」


「な、これほどのホテルで一人一室用意できぬのか!?」


 食い下がるアマリアだったが、主人の態度は冷たかった。現在、帝国や同盟国からドリアル城へ向かう援軍や冒険者がこの街に集結しているのだ。一部屋取れるだけでも有り難いと思え、と「神様」はこっぴどく叱られてしまった。


「くー! 何という口の聞き方! 神を神とも思わぬ奴め!」


 キングサイズのベッドとはいえ、四人での宿泊は流石に狭い。


「俺はソファでいいよ。インドア派を舐めるなよ?」


 太一の申し出に、リンが難色を示す。


「いや、それでは男女平等のこのご時世に悪い……」


「太一が良いと言うのじゃ、よいではないか。『安全』で」


「アマリア? それはどういう意味だ」


 太一が問い返すと、アマリアは鼻で笑った。


「女の子を泣かさずに済むから安全だと言うておるのよ!」


(ドキドキ……)

(な……泣かされてみたいという気持ちも、ある……)


 リンとローザは顔を見合わせ、互いの脳裏をよぎった不穏な期待を悟ったのか、深く頷き合った。


 結局、ジャンケンの結果、ベッドにはローザ、太一、リンの三人が並び、アマリアがソファで寝ることになった。


「ふぬー! 納得いかん! そなたら、事故があっても知らんからなー!」


 アマリアの呪詛を子守唄に、一行は深い眠りに落ちた。


 翌朝。

(ね、寝苦しい……)


 早くに目が覚めてしまった太一は、一足先に宿を出て散歩を始めた。

 街を歩くうちに、彼は「レッドクロス」の紋章が刻まれた建物を見つける。朝日が差し始めると、その建物の周囲の惨状が浮き彫りになった。


 建物の外まで、大勢の怪我人が寝かされている。いずれも前線のドリアル城から運ばれてきた重症患者たちだ。

 太一は迷わず袖をまくると、日が完全に昇るまで、一人、また一人と『ヒール』を付与して回った。



 宿から出てきたリン、ローザ、アマリアの三人は、その光景を呆然と見つめた。


「……神、か。あの方は」


 リンが感嘆の声を漏らす。誰よりも早く起き、献身的に怪我人を治癒する姿は、朝日の中で神々しく輝いていた。


「ふん、低レベルヒーラーのくせに……。太一様はすぐに帝国へ行かなければならないというのに」

(……なんと神々しい。このちんちくりんの自称女神とは偉い違いだわ……!)


「あたしは……そう、ソファなんかで寝かされたから起きれなかったのよ! 流石は私の弟子よね!」


 アマリアが勝ち誇る中、太一は一人の患者に問いかけていた。


「中は一杯なのか?」


「ああ。だが……それより、入りたくない理由があるんだ」


「何だ?」


 アマリアも傍らに立ち、問いを重ねる。


「中は、戦場より地獄だ。戦場を経験した騎士や冒険者たちが、おかしくなって暴れたり、泣き喚いて話もできなかったりする者で溢れかえっている……」


 太一の表情が険しくなる。


「PTSDか……。傷を癒しても、心の傷までは治らない、か」


 身体を治すだけでは終わらない「福祉」の現場が、そこには広がっていた。

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