第12話 野営への道と白銀の剣技
第12話 野営への道と白銀の剣技
帝都へ向け、太一、アマリア、リン、そしてローザ准尉を乗せた馬車が動き出した。御者台で手綱を握るのはローザである。
「さあ……参りますわよ」
(た、堪らん……。私は今、この勇者様たちを帝国へとお連れしている。これは歴史に名を残す偉業なり……!)
アマリアがジト目でローザの背中を見つめる。
「奴の頭の中は、なんだか随分と賑やかな気がするのう……」
城下を離れた一行は、深い森を抜け、湖を越えて帝国との中継地点となる街を目指す。
「初日は湖のほとりで野営をしますわ」
(野営……これこそ冒険の醍醐味じゃないか!)
ローザが平静を装って告げると、アマリアが太一を小突き、茶化し始めた。
「良かったのう、太一よ! こんな美少女たちと湖畔で野営とは!」
「俺はキャンプなんてやったことないぞ。生粋のインドア派なんだ」
「かあー! インドアだと? やるべきことしかやらん奴なんだな、太一は。だから女の子を泣かせてきたんじゃ!」
アマリアが騒ぎ立てると、リンの顔面は瞬く間に真っ赤に染まった。一方のローザはといえば。
(な、な、なにい!? あの方、どストレートすぎやしませんか!? ハッ、待て待て待って……。そんなことやあんなことになるかも知れないと言うの!? バカな、私はまだそんな経験……!)
ぶっ飛んだ妄想で、思わず頬を緩ませ、ニヤけてしまう。
「……太一様、モンスターです」
ローザが我に返り、低く告げた。
「え!? モンスターがいるのか!?」
「当たり前です。ここは異世界ですよ? 平和ボケも大概に……。モンスターなんて吐いて捨てるほどいますわよ」
(モンスターを珍しがるとは……。余程素敵な国からお越しなんですわね。是非とも私をそんな国へ連れて行って……!)
「私が行こう」
リンが身を乗り出したが、ローザがそれを制した。
「いえ……ここは私が」
馬車を止めると、前方には三体のゴブリンが立ち塞がっていた。
ローザは赤い鞘からレイピアを抜き放つ。軍服を纏い、白銀の髪をなびかせるその物腰には、冷徹な美しさが漂っていた。
(……ああ。太一様が見ておられる。身体の芯が火照る気がしますわ。最高に格好よく仕留めて差し上げましょう……!)
――ッタ!!
砂埃を巻き上げ、ローザは恐るべき速度で踏み込んだ。
タタタッ!!
鋭い三連突き。瞬く間にすべてのゴブリンの眉間を正確に貫いていた。
レイピアを鞘に戻し、チン……と硬質な音が響くと同時に、三体のゴブリンが崩れ落ちる。
「なんと! やるではないか!」
アマリアがパチパチと手を叩いて賞賛した。
(ふふ、小娘……私を誰だと? 帝国の武術会で常に上位に入る『白銀のレッドスコーピオン』とは私のことですわよ!)
「今のは確かに速かった。この娘、相当やりますね」
リンの言葉に、ローザの内心はさらに加速する。
(嗚呼……騎士様にお褒め頂くとは……ハァァン!!)
こうして、一行の波乱に満ちた旅路は始まった。




