第7話 疫病神
御堂咲耶。
士官大学最終学年に、帝国近衛軍の第2戦団へ士官候補生として仮配属されていた。そこでB級ジークフリードのパイロットとして、数々の実戦に参加している。
仮配属の1年間で、彼女の敵機・撃破数は10をゆうに超えた。これは士官候補生どころかエース級の数字である。更に、その撃破された敵機のうち3機はA級機体だった。
パイロットとしての御堂の才覚は、群を抜いていると言っていい。
しかし、問題行動も目立っていた。悪く言えば「甘い」上に「身勝手」なのだ。
「貴女が優しい人間であることは、決して悪くはありません。けれど、相手が同じように優しい心で戦ってくれるわけではありませんよ」
カイザーは、敢えて遠回しな言葉を選んでいる。直接的な言い方をしたら「他人への迷惑を考えろ」の一言で終わってしまうのだが。
「もしも、敵パイロットが機体のZCF機関を暴走させていたら……A級0061機は、B級機体の自爆に巻き込まれていました。青柳少尉の判断があったから、貴女も無事で済んだのかも知れませんよ」
「それは!」
違う……と、御堂は言いたかった。
(あのパイロットは、直ぐに戦意を喪失した……だから!)
数秒の敵機との対峙、鋼の装甲を通して肌に刺さった敵意と殺気……その敵意と殺気も、A級0061機が刃を突き立てた瞬間に失せていた。
但し、これは御堂の直感に過ぎない。証拠も、証明する手立てはない。
「B級ジークフリードは単座型コクピットですが、A級ジークフリードは複座型コクピットです。A級ジークフリードでの行動は、CユニットだけではなくSユニットをも危険に晒すことです。更に、共に作戦行動を取っている我がラインゴルドの兵員も巻き込れる場合もあるんです」
「……!」
コーヒーの最後の一口を飲みきって、カイザーは席を立った。
カイザーが去った後で、御堂と青柳のテーブルには追加注文したホットミルクが届く。青柳は、手元に取り寄せたホットミルクに砂糖を入れた。
「……」
ホットミルクをスプーンで掻き回す青柳の手を眺めながら、御堂は言葉を失っていた。
(そっか……あたし、青柳少尉も巻き込んだかも知れないんだ)
(また、疫病神になってるんだ)
疫病神……それが、第2戦団に仮配属されていた時に付けられた御堂の仇名だった。
敵機を撃破して、自軍の勝利には貢献した。しかし。その勝手な行動と命令違反で、周囲に皺寄せを強いていたのだ。
……戦火を広げてしまったこともある。
……味方に死者も出してしまったことも。




