第6話 身代金
食事が終わり、食後のコーヒーが運ばれてきた。
「……あう」
そのコーヒーに、青柳が絶句していた。
「しょうがないなあ……貴女の分のコーヒーは、あたしが飲むから、貴女は別に飲み物注文しなさい。ホットミルクでいい?」
「はい、お願いします」
青柳は、コーヒーが飲めないらしい。テキパキとタブレットを操作する御堂を見ながら、最初に「コーヒー付きハンバーグ・ランチ」3つを注文したのが誰だったかを、カイザーは記憶を辿る。
「コーヒー付きのハンバーグ・ランチでいいですね」
カイザー自身で念を押してから、タブレットの注文を確定させたはずだが……青柳は「コーヒーが飲めません」の一言を言い出せずにいたわけか。
引っ込み思案と命令違反の常習犯……この二人にA級機体を任せる状況に、カイザーも違和感を感じざるを得ない。
「あの投降したB級ジークフリードのパイロットは、どうなったんですか?」
御堂は、気になっていた疑問をカイザーに投げた。青柳にCユニットの接続を切られる直前、主スクリーンで「胸部装甲奥のコクピットから、地表に脱出した若い男性パイロット」の映像が見ていた。自分と同じか、もっと若い新兵だろうと思えた。
「ラインゴルドで捕虜として確保しました。身元を確認して、敵軍には身代金を請求してあります。もし、それが支払われれば解放しますが……まあ、有り得ないでしょう。近衛軍に戦争犯罪者として引き渡すことになりますね」
「有り得ない……って」
上級士官でもない限り、身代金の要求に敵軍が応じることはない。それを、戦争犯罪者として帝国近衛軍が引き取る。しかし。
近衛軍は『卑劣な戦闘行為』を行った敵兵に容赦はない。
「ラインゴルドの捕虜なんですよね? それなら、ラインゴルドで確保しておいて『捕虜交換』とかの材料にしないんですか?」
帝国近衛軍に引き渡されたら、あの新兵の命はない……そう確信する御堂は、カイザーに食い下がる。
「我々は、金で戦争を請け負う傭兵組織です。敵から身代金を取れないのなら、近衛軍に戦争犯罪者を引き渡します。それが、今回の契約です」
「そこを、何とか!」
更に食い下がろうとする御堂だが、それを面倒に感じたカイザーは切り札を切る。
「申し訳ありませんが、この件に特例は設けられません。それ以上話が続くのなら、我々は、貴女の命令違反と懲罰手続きを元に戻します」
「……!」
流石の御堂も、言葉に詰まった。
「申し訳ありません!」
その隣で青柳が謝罪しながら、また髪の毛がテーブルに付くほど低く頭を下げる。




