第5話 問題児
A級0061機は、赤龍の洞での戦闘から撤退していた。母艦である陸上戦艦に戻ると、そのまま御堂は「命令違反」の処分として懲罰室に軟禁されてしまう。
御堂の軟禁が解けたのは、部隊が作戦行動を終了して本部に帰還してからだった。
御堂咲耶と青柳礼子の二名は、帝国近衛軍第4戦団から『共同作戦』の名目で、ラインゴルド傭兵機団に派遣されていた。
「派遣先でのことですから、ラインゴルドの裁量で『なかったこと』にしておきますよ。しかし、第4戦団内で同じことをやったら、その場で懲戒処分だと思います」
食堂で御堂と青柳の前に座っているのは、ラインゴルド側の作戦指揮官カイザーである。傭兵団は、正規軍よりは「指揮官の裁量」が利くらしい。
「ありがとうございます!」
身体を折るように頭を下げたのは、御堂の隣に座る青柳である。青柳は、その短めの髪がテーブルに付くほど低く頭を下げていた。青柳が先に頭を下げたせいで、当事者である御堂の方が、間を外してしまい頭を下げ損ねてしまう。
間もなく、テーブルにハンバーグ・ランチの皿が三人分運ばれてくる。
一週間……御堂は狭い懲罰室に軟禁されていた。青柳の顔を見たのも一週間ぶりなら、他人と一緒に食事をするのも一週間ぶりである。他人の雑談の声や食器の擦れ合う音が聞こえる「当たり前の風景」が、ひどく懐かしく感じられていた。
安堵した青柳の顔は明るい。パクパクとハンバーグとパンを口に放り込むので、皿は直ぐに空になった。御堂もカイザーも、まだ半分も食べ終わっていない。
「良かったら、食べる?」
「はい、ありがとうございます」
おかわり自由のパンだけを食べていた青柳に、御堂が切り分けたハンバーグを差し出すと二切れを素直に受け取る。
カイザーが確認した記録では、御堂は士官大学卒業で着任した22歳。青柳の方が御堂より二歳年上の24歳のはずだった。
青柳が背が小さく童顔なこともあるが、御堂の方がお姉さん的ポジションにあるようにしか見えない。
その妹ポジションの青柳が、姉ポジションの御堂を作戦行動中に切り捨てて、更に命令違反の懲罰手続きまでしていたのは少し意外な気がする。
「この娘、重甲機兵のSユニットに入ると人格が変わるんですよ」
カイザーの疑問を察した御堂が、青柳のことを説明する。
「ああ、そうなんですね」
返事はしてみたが、それで完全に納得できるわけでもない。
……とは言え。
注意しなければならないのは「御堂咲耶」の方である。パイロットとしては優れた才覚がある反面、問題行動も多いのだ。




