第3話 卑劣な戦闘行為
緑濃色の鋼巨人と白い鋼巨人の睨み合う様を、御堂は妙に乾いた気持ちで眺めていた。コクピットの主スクリーンには、重甲機兵の頭部・機械眼球が捉える映像が転映されている。
前時代に行われた騎士や武者による戦い……それが、この時代では鋼巨人によって繰り返されているのだ。
唐突に、警告音が鳴り響く。
『左方向より敵機、襲来。回避して下さい』
青柳の声が、ヘッドセットを通して御堂に届く。A級0061機の頭部が左を向き、機械眼球の視界に敵の機影を捉えた。
Cユニットの主スクリーンに映ったのは、自機と同型の白い鋼巨人だった。
御堂は、胸部と肩部に描かれた所属を示す紋章を視認する。
(帝国近衛軍、第1戦団の機体だ!)
同じ帝国近衛軍の機体なら、援軍ではないか……そう判断した。
「大丈夫、味方機よ」
『違います!』
青柳の声は絶叫していた。耳に負担をかけないための音量超過フィルターが作動して、逆に小さく聞こえてしまう。
「え、何?」
……ガァーーン!
御堂が問い返すのと、鈍く重い衝撃音と共に機体が揺れたのは同時だった。
Cユニットの警告音が別種の音に切り替わり、機体との神経接続を介して左腕に違和感が走る。コンソール画面には、左上椀部が受けた斬撃のデータが流れていた。
「え……ええ!」
味方機と思った白い鋼巨人が、十字型のロングソードで斬り掛かって来たのだ。
『敵機です! 所属章を偽装しているんです!』
「なによ、それェ!」
戦場で所属を偽装するのは「卑劣な戦闘行為」として『星間協定』によって禁止されているはずだ。
しかし。眼前に在る白い鋼巨人は、続く攻撃のためにロングソードを構えて腰を沈める。
(次、下からの斬撃が来る!)
反射的に御堂は、敵機との距離を詰めるべく右脚を踏み込む!
脚部と腰部のスラスター、背中の主バーニアが瞬時に点火……まるで瞬間移動したかの如くA級0061機は、白い鋼巨人の間合いに滑り込んでいた。
ガキィーーン!
A級0061機の頭部で、白い鋼巨人の顔面辺りに頭突きを喰らわせる!
御堂の、動物的な素早い動きと意表を突いた攻撃に、白い鋼巨人の上体が仰け反った。ロングソードを構えた体勢が崩れる。
既に、A級0061機の右手は、左腰の打刀の柄を握っている。
刹那の後……引き抜かれた刃が、白い鋼巨人の左腰部を抉る。
機体との神経接続を介して、御堂の感覚で手応えを確信した!
白い鋼巨人は蹌踉めき、赤い砂に膝をつく。
そして、手にした剣を遠くに投げ捨てると「投降」を示す信号弾を撃ち上げた。




