第2話 赤龍の洞
今、戦場となっている地は『赤龍の洞』と呼ばれている。
地殻変動により中央部が大きく陥没したカルデラ型の地形で、周囲がグルリと切り立った岩肌に囲まれている。御堂たちが戦闘をしている中央部は、風で舞い上がった砂塵が降り積もって柔らかい。
先ほど御堂が確認したように、100トンの自重がある重甲機兵にとっては良い足場ではないのだ。
その上、周囲の切り立った岩石に音が反響する。戦場での音の変化を把握し難いためにSユニットの青柳は神経質になっていた。
前方で交戦中の味方機から信号弾が上がった。
『敵、B級ペルセウス型重甲機兵を投入。数は3機!』
背後の味方陣営からも信号弾が上がる。
『味方陣営も、B級ジークフリード型重甲機兵を追加投入!』
重甲機兵の主動力は、ゼナ・クリスタル・フィールド(ZCF)機構と呼ばれている。このZCF機構は膨大なエネルギーを取り出せるが、特殊な電磁波を発生させて他の電磁波に干渉してしまい、レーダーや無線通信を使えなくしてしまう。
そのため重甲機兵による戦闘では、情報伝達は『目視できる信号弾』の打ち上げて行われる。
「え! ちょ……あたしは?」
御堂と青柳の搭乗するA級0061機は、そのまま臨戦態勢を維持したまま待機の指示である。新たに投入された3機のB級ジークフリードが、前方の戦闘に加わるべくA級0061機の脇を通り過ぎていく。
『本来、A級ならばB級を相手にしないものです』
B級機体は、言わばA級機体の模造品である。量産化のために性能を犠牲にしたり、制限されている部分がある。ハードウェアとしての基本能力は、A級機体に劣るとされる。
少なくとも、この戦場での主力はB級機体だった。青柳の言う通りなら、A級0061機に出番はない。
「え……あの、あたし……ホントに立ってるだけなの?」
『最初に、そう言いましたよね?』
A級機体は、敵側がA級機体を投入してきた場合に備えて待機する。
今回の敵の陣営には、A級機体は配備されていない可能性が高い。なので、A級0061機は、出撃しても戦うべき敵がおらず、案山子となるのは想定されていた。
『この戦場に第4戦団のA級機体を参戦させたのは、複雑な事情があるからです。立っているだけでも戦略的意味合いがあるんですから、役目はしっかり果たして下さいね』
「……ぐぅぅぅ」
戦略的意味合いと言われて、御堂は言葉に詰まる。脳筋タイプの御堂は、小難しい理屈を考えられないからと「戦略・戦術は青柳に任せる」つもりで、作戦の詳細を上の空で聞き流していたのだ。




