第1話 重甲機兵
全高十七メートルの人型ロボットが、自身の足下を踏み締めた。
鋼の機体を通して伝わる地面の感触に、コクピットにいる御堂咲耶は「柔らかめだな」と感じる。
眼前のスクリーンの中では、六機の人型ロボットが戦っている。
緑濃色でズングリとしたフルプレート型甲冑を思わせるのは、敵側の『ペルセウス型重甲機兵』と呼称される機体である。そして、大きく肩部装甲が張り出し逆三角形の体躯に見える白い機体が味方機だ。
白い機体は『ジークフリード型重甲機兵』と呼ばれ、御堂が搭乗しているのも同型の機体だった。
緑濃色の重甲機兵は十字型のロングソードを振るい、白い重甲機兵は緩く反った打刀を振るって激しい剣戟を展開している。
『御堂少尉、絶対に勝手な行動はしないで下さいね』
ヘッドセットの声は「絶対」の部分に、異様なアクセントを付ける。
「はいはい、わかってるわよ」
『その返事が、わかってないじゃないですか!』
ヘッドセットの声が、ヒステリックに絶叫する。しかし、御堂はそんなことは意に介さずに、更に浮かれ気味な軽口を返す。
「だぁいじょーぶ、ですって!」
帝国近衛軍・第4戦団に所属するジークフリード型A級重甲機兵、機体番号0061。今、御堂はその機体のコクピットにいる。
重甲機兵のパイロットとしては「A級機体を預かること」は憧れである。その憧れが実現したのだから、多少の浮かれ気分は仕方ないのかも知れない。
……と思っても、やはり気が気でないのが監理者である青柳礼子の立場である。
ジークフリード型A級重甲機兵のコクピットは複座型である。機体の運動系を制御するCユニットと、システム管制および戦術を監理・指揮するSユニットの二名が搭乗する様式になっている。
近衛軍の将校・御堂咲耶少尉はCユニット、青柳礼子少尉がSユニットとして、指揮権は年上の青柳少尉にある……はずだったが。
A級0061機の前方で展開する戦いは、緑濃色の機体と白い機体が三対三での硬直状態となっていた。剣を打ち合わせる回数が減り、敵と味方の双方とも間合いに踏み込むのを躊躇しあう様相を示している。
「ねえ。一気に攻め込んで、決着付けちゃおうよ」
味方と敵が三対三で拮抗しているなら、A級0061機が加われば四対三で優位になる……御堂はそう考える。
決して功を急ぐだけの言ではない。趨勢を一気に傾けて、戦いを早期に決着させれば死者や被害を最小に留められる……そんな気持ちもある。
しかし青柳は、御堂を制止する。
『想像以上に、ここは厳しい地形の戦場なんですよ』




