第27話 激突!
A級0061機のCユニットで、御堂は大きく息を吸い、そして吐き出す。機体の膝と腰を軽く沈め、右脇に構える打刀の柄を握り直した。
装甲の隙間から、光粒子が流れ出す。
機体各部の駆動装置へ送る電流が増加したために生じる余剰熱が、光粒子に変換されて排出されたのだ。
御堂が冷静さを取り戻したことは、A級0061機の様子から敵機にも伝わったらしい。
メイン・スクリーンに映るA級ペルセウスは、左腕に装着していた凧型盾を投げ捨てて、ロングソードを両手持ちとした。
「来る?」
『おそらく。陽動を仕掛けても効果が無いと判断したのでしょう……戦いが長引けば、廃熱効率の悪いペルセウス型の方が不利になりますからね』
効率的に熱を排出できる光排熱機構は、ジークフリード型特有のシステムでペルセウス型には装備されていない。
素体構造の発熱は、熱膨張による物理的抵抗を大きくし、また電導効率を低下させる。継戦能力の安定性では、ジークフリード型の方が有利とされている。
赤龍の洞に吹く風が、両機の脚下から吹き上げる赤い砂塵を流す。
今は御堂よりも、Sユニットにいる青柳の方が緊張していた。カルデラ状の周囲の切り立った岩肌が、重甲機兵の駆動音を反響させる。一方で、足下に降り積もった柔らかい砂塵は、吸音材のように音を吸収してしまう。
駆動音や振動の変化で「敵機の挙動」を予測するのは、非常に難しい地形なのだ。
結果的には、御堂の『直感』と『反射神経』を当てにする方が有利とも言える。
「今だけ……今だけだから!」
内心の葛藤が、思わず口に出てしまう。マイクのスイッチは切れているので、その独り言は、Cユニットの御堂には伝わらない。
A級ペルセウスの脚下が目映く発光し、赤い砂塵が勢いよく吹き上がる。一瞬だけ遅れて、背中のバックパックの光がオレンジ色から青白く変わる。
御堂は、反射的に右の爪先に力を込める。A級0061機の脚下からも赤い砂塵が舞い上がった。
(狙いは……腰か!)
A級ペルセウスは、腰を沈めた姿勢で突進してくる。剣先も下に向けた状態だ。
(腰部バランサーを狙って、ロングソードを突き上げてくる!)
真に、重甲機兵の弱点までの「最短距離」である。
「ならば!」
御堂は右脇に構えていた打刀を、右肩に担ぐ位置まで持ち上げた。
敵の突進にタイミングを合わせて、右爪先を軸にして反時計回りに機体を捻る
……ザクッ!
ジークフリードの腰にあるスカート状の草摺装甲を、ロングソードが掠める。紙一重で敵の突きを躱した御堂は、左脚を一気に踏み込む。




