第26話 想像以上?
A級ペルセウスの背中の光が、オレンジ色から青白く変わる。次の瞬間、左肩に衝撃が走った
「!」
御堂の眼でも追い切れないほどの、素早い動きだった。予測を超えた敵機の速さに、御堂は困惑を覚える。
『左肩部、損傷なし!』
先ほどと同じ報告を青柳の声が告げる。
了解……と返事をしようとした刹那、A級ペルセウスはまたも距離を詰めて来た。
……ガキン!
……ゴォォン
敵のロングソードは、繰り返し左肩部装甲を打ち付ける。しかも今回の斬撃では、互いの機体の装甲板がぶつかり、擦れ合うほどに接近していた。
(さっきより深く踏み込まれた?)
左肩への圧迫感を振りほどこうと、左肘を持ち上げてA級ペルセウスの機体を押し返す。同時に、右脇に引いた打刀の剣先を真横に持ち上げた。
A級ペルセウスも、その剣先の動きを見逃さない。
両機とも、脚部スラスターの出力を上げた。噴出する気流に吹き上げられた赤い砂塵が、互いの機体の機械眼球の高さにまで舞い上がる。
「……くっ!」
A級ペルセウスの姿が、メイン・スクリーンの中で僅かに霞む。A級0061機が左脚を踏み込んだが、その挙動は一瞬だけ遅れた。
既にA級ペルセウスは、後退する体勢に入っている。このまま一閃しても、敵機には剣が届かないだろう。
「ちぃ!」
斬撃を見舞い損なった口惜しさに、御堂は舌打ちする。
……ヴヴヴ
A級0061機の機体が緩く震えた。CRの神経と同調する重甲機兵は、Cユニット搭乗者の感情に微妙な反応をすることもある。
『落ち着いて下さい!』
御堂の動揺を感じ取った青柳は、いつもより口調が強かった。
『ペルセウス型重甲機兵としては高い機動性ですが、衝撃のエネルギーは大きく違いません。スピードの分、逆にパワーは小さいんです』
敵機も、こちらを警戒している。距離を詰めているようで、反撃に備えて回避する体勢を解けないでいるのだ。だから、斬撃はヌルくなる。
「それって……速いだけで、打撃力は軽いってことよね?」
『速さで驚かして、動揺を誘うつもりでしょう。乗せられないで下さい』
「了解。致命傷にならないなら……どれだけ斬撃を浴びても、この機体の装甲板に多めに傷が付くだけのことよね」
『はい。機体の傷は、お金をかければ直せますから』
できれば「お金がかからない」ようにして欲しいところだ。しかし、御堂に余計な発言は面倒を招く……その部分は青柳が飲み込むことにする。
舞い上がった砂塵を『赤龍の洞』に吹く風が押し流す。明瞭となったメイン・スクリーンに映る敵機は、やはり25メートルの距離を保っていた。




