第23話 出たとこ勝負
『後方のB級二機は、ラインゴルドが牽制してくれています。正面のA級だけに集中して下さい』
「了解!」
連邦勢力の陣営からA級ペルセウスと二機のB級ペルセウスを出した時に、ラインゴルド陣営からも二機のB級ジークフリードが送り出されている。その二機は、既にB級ペルセウスを足止めしていた。
A級0061機の背面バックパックから信号弾が撃ち上がった。
青柳が、赤龍の洞に在るラインゴルド陣営全体に『敵B級ペルセウスの足止め』を依頼したのだ。御堂をA級ペルセウスとの戦いに集中させる……そして、自分自身もA級0061機のハードウェア制御に集中するためである。
「あの、A級ペルセウスのデータある?」
主モニターに映るA級ペルセウスを観察しつつ、御堂が青柳に問いかけた。コンソール画面には、既にAIによる検索結果は表示されている。
『ペルセウス型A級重甲機兵機』
『PX6型式識別番号1063』
『アルメニア軍所属』
しかし、御堂が知りたいのはカタログ・データではない。戦場で「どんな戦い方をするのか?」である。
『この機体と帝国近衛軍が交戦した記録は6年前のものです。おそらく……今はパイロットも交代して機体も相応の改修を受けています。今回の参考になる情報ではありません』
「なら……出たとこ勝負でいいのね?」
『はい』
御堂は勘がいい。それは天性の才と言っても良く、刹那の駆け引きで先手を取れる直感が、御堂の最大の強みである。
中途半端な古い情報を与えるのは、その『勘』を先入観で曇らせる……この場での青柳は、そう判断していた。
A級ペルセウスとA級0061機は、およそ60メートルの距離を空けて睨み合う。互いに、一挙動で間合いに飛び込める距離ではない。
A級ペルセウスは、ロングソードを右腕に握って凧型盾を装着した左腕を突き出している。
対して。
A級0061機は、両手を添えた打刀を右脇に引く『脇構え』を取る。
御堂からは、A級ペルセウスは凧型盾に隠れて視認し難い。逆に、A級ペルセウスからも、A級0061機の剣先が見えないために間合いが計れない。
御堂は、A級ペルセウスの膝から下を注視していた。
赤龍の洞の地面は柔らかい砂が積もっている。脚部スラスターが稼動すれば赤い砂塵が舞い上がるはずである。A級ペルセウスの足元にはそれは見えない。
(スラスターは稼動してないか)
しかし、敵機の爪先部が、地面に広がる砂の紋様を移動している。
(足さばきだけで、近づいてる?)
俗に言う摺り足の動きで、A級ペルセウスは近づいて来ている。




