第22話 傾く戦局
A級0061機は、二機のB級ペルセウスを機械眼球に捉えたまま、打刀を両手を握る。そして、腰を僅かに沈めながら剣先を右脇へ回す。
脇構えを取ったA級0061機を相手にして、二機のB級ペルセウスは完全に怖じ気づいていた。
軍の象徴たるA級重甲機兵が瞬殺される……それは余りにも衝撃的で、連邦勢力軍の士気を挫くのに十分な事件だった。
……しかし。
それは決して両機の実力の差ではない。A級ペルセウスの虚を突き、実力を出させないうちに撃破できただけである。決して、御堂の操縦技術が勝っていたわけではない。
赤龍の洞で小競り合いをしていた連邦勢力軍のB級ペルセウスは、みな動揺し、ラインゴルドのB級ジークフリードに圧され始める。
今、戦局は一気に傾こうとしていた。
『出て来ましたよ、御堂少尉。もう一機のA級です』
Cユニットの副モニターに、補助カメラが捉えた映像が転映された。
緑濃色の、フルプレート型甲冑を思わせる重甲機兵……丸みを帯びた外装は、中空装甲となっており衝撃を吸収して素体構造を保護するように設計されている。
ズングリとした丸みを帯びたフォルムは、B級のそれと変わらない。しかし、背面のバックパックがずっと小さい。
B級機体の主動力は出力が小さい。出力不足を補うバッテリーが必要で、それがバックパックに搭載される。
補助バッテリーを持たない機体……A級ペルセウスである。
『同じ奇襲攻撃は通用しないでしょう。正真正銘、A級を託されたパイロットとの戦いになります。気を引き締めて下さい』
「わかってますって!」
A級はB級よりも高出力な動力機関を備え、更に補助バッテリーの分だけ軽い。
しかし、単にハードウェアとして優れているだけではない。その優れたハードウェアを託されるのは、頂点クラスにある然るべきパイロットなのだ。
それ故に、軍を象徴する存在でもある。
A級0061機の右脚が、赤い砂塵を踏み締めた。
ゆっくりと前進してくるA級ペルセウスに、左肩を突き出すよう斜めに機体を向ける。機体の上半身を時計回りに捻りながら、右脇に構えた剣を引いた。
「レイコ、後方のB級ペルセウスの動きは?」
補助カメラがB級ペルセウスの映像を副モニターに映していたが、それを見る余裕はなかった。御堂は主モニターに映るA級ペルセウスだけを見つめている。
御堂とて、敵機を侮ってはいないし、自らの技量を過信してもいない。鋼の装甲から滲み出るような威圧感は、間違いなく「自分よりも多くの実戦をくぐり抜けてきた」相手だと確信できた。




