第18話 また、肩透かし?
唐突に、歓喜の声を上げた御堂に、青柳は面食らってしまう。
「……えっと……何が、やっぱりなんですか?」
「だから!」
御堂は、青柳の方へ身を乗り出した。サンドイッチの大皿の上に御堂の胸が覆い被さってしまい、青柳は仕方なくフルーツの方へ手を伸ばす。
「だから……あたしが『あのパイロットは、戦いたくなかったんじゃないのか』って言った件よ。あたしの言った通りだったわけでしょう!」
あのパイロットを殺さなくて良かった……自分の直感と判断が正しかったこと、そして命を一つでの救えたことに、御堂は心の底から安堵した。
(これで青柳少尉もわかってくれたはず!)
一方の青柳は、ウサギの形にカットされた林檎をつまみながら御堂の話が一段落するのを待っていた。
「それが、何か?」
「……え?」
青柳は次の御堂の話を待ったが、御堂の方は言葉に詰ってしまう。青柳の抑揚のない反応は、またも御堂に肩透かしだった。
「あ……あのさ……『今回は、御堂少尉の仰った通りでした』とか……『御堂少尉の判断は正しかったです』とか……言ってくれないのかな?」
「何故ですか?」
青柳の言葉で、サンドイッチの大皿に身を乗り出していた御堂の身体がグラリと揺れた。そのまま御堂は、椅子に崩れるように腰を下ろす。
障害物がなくなったので、青柳はまたサンドイッチに手を伸ばす。
「所属章を偽装すると言う『卑劣な戦闘行為』を行う敵に対する処分を果たさなかった命令違反は変わりません。何が『正しかった』のでしょうか?」
「……それは、人質を取られて仕方なかったわけで……」
再び御堂が覆い被ってきても大丈夫なように、青柳はサンドイッチの大皿を手前に引き寄せる。
「人質の件は『事後に見知った情報』ですから、それがあの時点での命令違反を正当化する理由にはなりませんよ。第一、その人質の話だって本当かどうかわかりません。パイロットが嘘の証言をしている可能性も、かなり高いです」
青柳の喋り方は、まるでAIによる自動応答のように事務的だった。今度こそ「同意して貰える」と信じた御堂の期待感を、根こそぎ砕くものだった。
「誤解を生まないよう、厳密な言い方で伝えておきますよ」
感情の籠もらない、機械音声のような調子で青柳は続けた。
「遠江州は、敵勢力とは一矢も交えず、帝国に対してのみ刃を向けました。これは『予め、計画されていた寝返り』だった可能性を疑うべきです」
遠江州は『敵勢力に占領された』のではなく、帝国に反旗を翻すタイミングを計っていた……青柳は、そう指摘する。




