第17話 遠江州
部屋に届いた3人分のサンドイッチとフルーツの盛り合わせを、御堂がテープルに置く。青柳も作業を一段落させてタブレットをOFFにした。
冷蔵庫から缶ビールを取り出した御堂が、青柳にも勧める。一応、青柳はそれを受け取ったが目が泳いでいる。
「乾杯!」
缶ビールのプルタブを開けた御堂は、青柳の手にある缶に自分の缶の端をぶつけた。この時、青柳のビールが開けられてないことには気付かなかった。
「あたし達のジークフリード、まだ修理終わらないの?」
缶ビールを置いてサンドイッチを口に運ぶ青柳に、缶ビールを一気に開けた御堂が問いかけた。
「まだ、かかります」
「早くしてくれないと、遠江州防衛隊が全滅しちゃうよ」
御堂の口の中で,小さく舌を打つ音がする。ラインゴルドは、身代金が取れない遠江州防衛隊を敢えて助ける意思はない。御堂としては、同じ帝国民が無駄死にするのを何とか止めたいと思っていた。
「遠江州は、もう敵軍ですよ」
青柳は冷ややかに言う。
「遠江州は、襲来した敵勢力を目の当たりにして一切戦火を交えることなく無条件降伏したんです。州政府は『州都市の市民に犠牲を出さないため』と声明を出しましたけど……」
「それは仕方のない選択だったんじゃないかな。連邦勢力は、かなりの戦力をまとめ上げて侵攻してきたんでしょう?」
遠江州議会が、連邦勢力の軍門に降った……その情報は、御堂も知っている。また状況からして「致し方なし」と同情していた。
「先の戦いで御堂少尉が助けたパイロットから、証言が取れています」
御堂は、思わずハッとしてしまう。ラインゴルドに捕囚され、身代金が支払われずに第4戦団に引き渡されるパイロットのことである。
「遠江州に入った敵軍は、都市の発電施設や浄水施設などを占拠して都市インフラを盾に取って州議会を支配下におきました。その、州議会の決定により、州防衛隊の全兵士および装備が敵軍の配下となりましたが……防衛隊兵士の中には、家族を直接人質にされた者もいるそうです」
「……」
「近衛軍と同じジークフリード型であることを利用して『所属章を偽装して奇襲する』作戦は、敵軍からの命令だと言っています」
もしかしたら、あのパイロットも人質を取られているのかも知れない……御堂には、そんな気もした。
「本人の弁として……『無制限かついかなる法の制限を受けない』報復の対象となる卑劣な行為はしたくなかった。なので、奇襲に失敗したと思った時点で、直ぐに降伏し戦闘を放棄した……と」
「ほら。やっぱり、そうでしょう!」




