第13話 赤龍の洞、再び
赤龍の洞での戦闘は、様相を一変させていた。
敵陣営では、緑濃色のペルセウス型重甲機兵は後方へ下がって、白いジークフリード型重甲機兵が前面に出てきている。
カイザー隊の重甲機兵は、同型である白いジークフリード型機体と戦っていた。
「ジークフリード型同士の戦いを見せつけられるのは、あまり気分は良くないな」
地表には、いくつかの勢力が存在している。その勢力ごとに、主力とする機体はある程度分かれているため、勢力間の戦いであれば異なる機体で戦いが行われる方が多い。
「所属章は、遠江州防衛隊の機体です」
カイザー機でSユニットを務めるベルーナが、Cユニットのサブモニターに関連情報を流してくる。
「遠江州……か」
遠江州は、西方域の都市国家で、帝国と同盟関係にあった外殻都市の一つだった。少し前に、連邦勢力の攻撃に晒され、無条件降伏をしている。
「御堂機と交戦して鹵獲したB級機体は、遠江州防衛隊に所属していたものです。パイロットの証言によると、降伏後に『防衛隊は連邦勢力の支配下にある』とのことでした」
要するに「所属章を偽装して奇襲を仕掛ける作戦は、二度目の成功はない」と判断したのだろう。それで、降伏した遠江州防衛隊を前面に押し出して、生粋な自軍の消耗を抑えるつもりである。
「遠江州とて、帝国と同盟するかつての味方だった。味方同士を戦わせて、互いに消耗させるのは占領する側の常套手段だな」
しかし。
もしも敵側が「味方同士が戦うことに躊躇う」と言う心理を期待していたなら、それは見当違いだった。
ラインゴルドは傭兵組織である。金で雇われただけの集団には「かつての帝国の同士」と言う仲間意識は一切ない。
実際、今現在に眼前で行われているジークフリード型同士の戦闘は、死神の紋章の機体が圧倒的に圧している。この差は、ラインゴルドと遠江州防衛隊のパイロットの熟練度もあるだろうが、遠江州防衛隊の側の「士気の低さ」が大きいだろう。
「御堂少尉を外したのは、正解でしたね」
「……ふむ」
御堂機と交戦した後に捕囚されたパイロットが「遠江州防衛隊の所属」だと判明した時点で、このような戦況の変化は予測されていた。
もしも。御堂がA級機体で、この戦場にいたら?
A級機体は、A級機体の出現に備えて待機する……ベルーナには、御堂がその暗黙のルールを守るようには思えなかった。
不用意に飛び込んで行く気がする。更に「帝国の同士である仲間意識」が戦いの腕を曇らせたら、A級機体でもB級機体に撃破されることは十分に有り得る。




