第12話 気晴らし?
カイザーから「休んで下さい」と言われた御堂と青柳は、嵯峨州の繁華街をブラついていた。
ラインゴルド傭兵機団のカイザー隊は、この嵯峨州に近いS33中継基地を仮本部として拠点にしている。
表向きは「休暇」扱いだが、現実は「戦列から外された」ことを御堂でも理解していた。それでも、気分を切り替えられるのが御堂咲耶と言う人間である。
「礼子に似合う服を、買って帰ろうね」
プライベートと言うことで、御堂は青柳を「下の名前」で呼んだ。
地味な作業着のようなデニム生地の上下を、青柳は着ていた。高校時代のものだと言う。この6年……近衛軍の研究施設にいた青柳は、私服を新調していないと言う。
(まあ、身長は伸びてないのかも知れないわね)
小柄で童顔な青柳なら、高校生と言っても通用するかも……と御堂は思う。
しかし。
(胸だけは、あたしより大きい?)
御堂自身も「それなりに大きい方」だと自負あるが、青柳の方が大きい。そこには競争心を感じてしまう。
「別に、妾は必要ないですから……御堂少尉の買い物を優先して下さい」
「もう……プライベートな時間なんだから、あたしのこともサクヤでいいよ」
「慣れた呼び方の方が楽ですよ」
合理的ではあるが、人の温もりのない物言いをされて……御堂は、思わず士官大学時代のある同期生を思い出す。
「第一、ここで買ったら高く付きますから」
「……ん」
そうだった。
今いるファストフード店で、ケーキセットを注文しようとした際に、御堂は値段の高さに驚いたのだ。
「帝国の直轄領でない西方域は、消費税が15パーセントとかですから割高です」
この嵯峨州は、帝国と同盟関係で繋がる外殻都市である。帝国の直轄領とは様々なルールが異なる。
「直轄領は3パーセントだよね。でも、このケーキセットは倍くらいの値段になってない?」
「なってると思いますよ。消費税は、仕入れから製造、そして流通の過程で幾重にもかかりますから……末端価格には累積的に影響します。ですから、直轄領って実は物価も安くて暮らし易いんですよ」
青柳が「経済問題に博識」だったのは、御堂には意外だった。
青柳を「折角の休暇だから、ショッピングをしよう」と誘ったのは御堂である。
しかし、青柳は最初から買い物をする気はなかったようだ。特段、繁華街に興味を持っているわけでもない……御堂の気晴らしに「付き合うため」に応じてくれたのだろう。
「ありがと」
「……? 何ですか?」
口の中で小さく呟いた「お礼の言葉」は、青柳の耳には届かなかった。




