第11話 似たもの同士?
ベルーナの返答は「知りません」であり「わかません」ではない。どうやら、冷静に分析する前に、生理的な嫌悪感を生じてしまったらしい。
「ご苦労だった。青柳少尉の『赤龍の洞での、A級0061機に対するモード調整』を報告書にまとめておいてくれ。帝国近衛軍のテクニックは、我々にとっても参考になる」
「はい」
運動操縦者と管制監理者の違いはあるが、ベルーナも勝ち気な性格で「御堂に似ている」と言うのがカイザーの見立てである。似たもの同士の競争意識もありそうだ……と考えておく。
整備工廠の出入口に向かうベルーナは、ちょうど工廠に入って来た青柳とすれ違った。丁寧に頭を下げるベルーナに、青柳はドギマギしている。
……そう言えば。
青柳と御堂には、まだベルーナを紹介していなかったのをカイザーは思い出す。
カイザーに気付いた青柳が、美しい姿勢で敬礼をした。
それから、ベルーナが降りて来た機体の隣にあるジークフリード型重甲機兵に向かって歩いてゆく。左上腕部の装甲を取り外した状態になっているそれは、御堂と青柳のA級0061機である。
メカ・スタッフと、機体の修理状況を相談しに来たのだろう。
「人間に例えれば『骨にヒビが入った』ような感じだな。上腕部の骨格繊維にエネルギーを送り込んで結晶の成長を促進させているところだよ」
「骨格の交換は、無理ですか?」
「うちじゃ、無理だよなぁ」
近づいてみると青柳とスタッフのやり取りが耳に入る。
採算度外視で部品交換できる近衛軍と、コストを考えざるを得ないラインゴルド傭兵機団では整備や修理に対するスタンスは異なる。
正直なところ、この第4戦団との共同作戦は、ラインゴルドにとって「割りの良い仕事」と言うわけでもない。できるだけコストを抑えたい。
「盾装備で出るか? 貸与できると思うぞ」
「盾装備……ですか」
青柳は考え込む。御堂の戦闘スタイルは「剣を両手持ちでの斬撃」なのだ。万が一戦闘になれば、左腕の盾は邪魔になる。
どうしたものか……と思案している青柳に、カイザーが提案した。
「修理が終わるまで、貴女と御堂少尉は休んで下って構いませんよ。それまでは、私がA級ジークフリードで前線に出ます。我がラインゴルドにも、実戦経験を積ませたい新人がいるんですよ」
ベルーナが降りて来た機体が、カイザーの愛機である。ベルーナをSユニットとして、指揮官自ら出撃すると言う。
「でも……あ!」
カイザーの双眸が「何をするかわからないパイロットを前線に出すのは危険」と語っているのを、青柳は読み解いた。




