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『良かれと思って』やったことが、大抵の場合、相手の傷口に岩塩を擦り込む結果になる

「うっ……」


ゴボッと血の塊を吐いて、ジノはその場に膝をついた。


「ジノ様!!」


すかさず飛んでくる回復(ヒール)に、ジノは追い打ちをかけられるように、更に血を激しく吐いた。


「いや……回復(ヒール)は待てって……」


「も、申し訳ありません!!」


(こいつ、一連の流れ見てなかったのか……)


「……大地の癒し(アースヒール)


呼吸を整え、ジノは立ち上がった。


「俺に回復(ヒール)は厳禁だ。いいな?」


「……はい。分かりました」


ルミナはあまりの展開に、まだ動転していた。

はっきりと分かったのは、侯爵夫人が吸血鬼(ヴァンパイア)だった事。


ジノと夫人のやり取りについては、頭の整理がまだつかない。


(ジノ様に、()くべきなのかしら?)


「長居は無用だが、この城のメイド達をとりあえず治療する。普段から血を吸われていたようだから」


「は、はい!」


夫人に血を吸われていたメイドは瀕死(ひんし)の息だった。


彼女を魔法で回復させ、夫人に関することを聞く。


「私は、家がこちらの近所で……お給料が良いので応募しました。夫人に関しては何も」


落ち着きを取り戻したルミナと手分けして、城内のメイド達を回復させていく。


この古城には最低限のメイド達しかいなかった。


エントランスホールで再集合し、情報を出し合う。


「オークションに合わせ、こちらに滞在する為に、わざわざ現地でメイドを募ったようです」


「それ以上の情報は……」


ジノはうーんと(うな)った。


「そもそもクロムウェル侯爵って、実在すんのかなぁ」


(夫人はジノ様の事を同族と言っていた。やっぱりジノ様に確認しないと……)


「あの、ジノ様……」


「何だ?」


「夫人が言っていた事なんですが……」


「あぁ、血を吸うとかの話?」


ジノは屈託(くったく)なく話し始める。


「俺の父親がそっち系の人? つまり俺は魔物との混血(ハーフ)なんだ」


混血(ハーフ)……ですか?」


「俺は人を襲った事なんかないし、これからもするつもりはない。今言えることは、それが全てだ」


そして、ジノは聖剣が選んだ勇者でしかない。


「生まれの所為(せい)で、光属性の魔法はちょっと苦手だ。こいつも、な」


そう言って、腰に下げた聖剣を指差して笑う。


「だから、俺に回復(ヒール)は厳禁て話」


「私、何てことを……」


ジノに回復(ヒール)を掛けるなんて、傷口に塩を塗るような行為だ。


「勇者なのに、聖剣を握る度に血を吐くって」


「腹の中から()けるんで、中々苦しいぜ? 元々丈夫に出来てるから、このくらいじゃ死なないが……」


「勇者をやるなら、この苦しみに耐えないとダメなんだ」


「……そんな!」


ルミナは勇者にとって良かれと思い、必死に光魔法を習得した。


それが返って勇者を苦しめてしまうとは。


「そんな顔すんな。光属性以外の回復系は使えるし」


「それでアースヒールを……?」


「魔法の才はあるんだけど、学がないから。イリアスに勉強しろって言われた」


「あっ!」


「姫様!!」


突然呼ばれて振り返ると、ドアの前に双子が立っていた。


「良かった、探したんですよ!」

読んでいただきありがとうございます。


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