勇者の称号より先に、食い逃げ犯のレッテルを貼られる主人公を誰が救えるのか
こんにちは
ここって何を書くべきかいつも悩みます。
──ジノの姿は、突然降って湧いた。
「あっ、こいつだ!!」
国境の町の、通り沿いにあるオープンカフェの店長は、消えた食い逃げ犯を追っていた。
黒髪の青年と、フードの子供。
コーヒー一杯とフルーツジュースを注文して、いつの間にか消え失せていた。
「……えっ? あー?」
「捕まえてくれ、食い逃げだーーーー!!」
状況を即座に理解したジノは財布を取り出す。
「いや、金なら払うって……」
「捕まえろーーー!!」
店主はとても話が通じるような雰囲気ではない。
「いや、勘弁してくれ……」
走って、逃げおおせることは簡単だ。
だが、そのままだとお尋ね者になってしまう。
結局、元いた場所に戻ることを選んだら、このザマだ。
「────っ!」
「……見つけた!!」
「!?」
人だかりの中に一際目立つ白金髪──王女だ。
(色々ヤバい……)
「勇者様……?」
王女はジノに気が付くなり、物凄い勢いで、突進して来た。
その身体に腕を回し、離すまいと懸命にしがみつく。
「勇者様、私を置いていかないで……」
「ゆ、勇者だって!?」
周りの野次馬達は、“勇者”の単語が出た途端にざわつき始める。
「おい……」
王女の拘束は固い。華奢な身体から、どうやってこんな力を出しているのか?
王女の髪から、ふわっと良い香りがした。
(ダメだ、何考えてる!)
「もうお傍を離れません!」
ジノが言葉に詰まり、困惑していると、野次馬の中から目立つ赤毛が二人出て来た。
「店主、お代はいくらだ?」
「あぁ、合わせて40Gだ」
ルディは財布から素早く支払いを済ます。
「あ、領収書をくれ」
「ちょっと待ってな」
(いや、その費用請求、結局は俺に来るだろ……)
「はい! 下がれ、下がれ、見せ物じゃない!」
ルゥが野次馬を退散させ、その場には王女一行と、ジノだけが取り残された。
「勇者様、いや、ジノ」
「……てめぇ、何逃げてんだ?」
「……」
ルディとジノの身長はさほど変わらない。
正面から、ジノを睨みつける。
「ルディ、勇者様に失礼よ」
「姫様、こいつは勇者の風上にも置けない奴です」
「食い逃げですよ? 食い逃げ。犯罪者ですよ?」
(イリアスが突然テレポートした所為なんだが)
「上に報告出来ませんよ……食い逃げ犯が勇者だなんて」
王女はジノにしがみついたまま離れない。
「姫様、いつまでそうしてるんですか?」
「勇者様が逃げないと仰るまで離れません!」
ジノの胸に顔を埋めたまま、ルミナはきっぱりと叫んだ。
「……もう、分かったから。とりあえず離れてくれないか?」
ジノは天を仰いだ。
腹を括るしかないのは分かっている。
ルゥは包んだ布を開け、聖剣をジノに差し出した。
「……はい。絶対にもう手離さないで下さい」
ジノは一瞬躊躇うが、手を伸ばしてそれを受け取った。
聖剣をジノに渡したルゥは、王女に向き直る。
「姫様、先ほど聞いた情報なんですが、帝国側で不穏な動きがあるようで……」
「王国側からの入国を制限しているようです」
(俺も朝イチで行ってみたが、ダメだったな)
ルディが眉を顰めて呟く。
「どうにも、きな臭いな……」
「噂では王国へ侵攻の準備をしているとか」
「!!」
「それは王国の王女として、聞き捨てなりません」
王女は毅然と言い放った。
「帝国へ潜入して、真実を確かめなければ」
「もし、本当に戦争を起こそうとしているなら、いち早く情報を掴み、準備する必要があります」
「ええ、姫様」
「ジノ様もいますし、少数精鋭で参りましょう」
ルディが嫌味ったらしくジノを睨みつけた。
「……」
「しかし、姫様。いくら勇者様が同行するとはいえ、国王陛下が何と言うか……」
「お前は馬鹿か?」
「姉さん?」
「律儀に報告なんかしたら、反対されるに決まってるだろう」
ジノを置いてけぼりに、帝国へ行く話がどんどん進んでいく。
そして、どうやら内緒で行くようだ。
「では、まずこの見た目からどうにかしましょう」
「僕達は些目立つので」
読んでいただきありがとうございます。




