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『自分は普通』だと言い張る奴ほど、大抵その背後に世界を滅ぼせる設定を背負っている

こんにちは

連続で更新予約をすると、何話だったか忘れます。

長くなると言われ、ジノ達は場所を変えることにした。

通り沿いのオープンカフェで、二人で向かい合って座る。


(いや、何でここなんだ……?)


落ち着かないジノとは別に、イリアスは足をぶらぶらさせている。


注文したフルーツジュースが届くと、目を輝かせた。


それを一口(すす)ると、イリアスは(ようや)く話し始めた。


「私の故郷の村で、闇の瘴気(しょうき)が発生してな」


「どうやら闇の呪物が持ち込まれた」


「で、どうして母さんが必要なんだ?」


「闇を(はら)えるのが勇者だからだ」


勇者というワードに、ジノは溜め息をつく。


「でも勇者は死んでる」


「でも代わりはいる。……其方(そなた)だ」


「なぁ、何でなんだ?」


(どうしてどいつもこいつも、俺を巻き込む?)


「そういう星の下に生まれたのだ。……諦めろ」


そう言い放ったイリアスは、さも当たり前のように告げた。


「私の村は既に闇の瘴気(しょうき)が酷く、一刻の猶予もない」


「その割にはのんびりしてね?」


(しば)し待て」


コップを傾け、ジュースを一気に飲み干す。

イリアスは小さくゲップを一回すると、ニヤリとして

呪文を唱えた。


転移(テレポート)


「!!」


眼前に広がったのは、何処(どこ)かの森。

まるで墨を流したような瘴気(しょうき)が取り巻いていた。

黒い霧の為、視界が濁って前が見にくい。


「おいおい、いきなり飛ぶなって」


「何だこれは……?」


どこから持ち出したのか、ガスマスクを装備したイリアスがスッとジノの隣に並んだ。


「付いて来い」


視界の悪さを物ともせず、イリアスはどんどん進む。どうにかはぐれないように、ジノは付いていく。


進めば進むほど、より瘴気(しょうき)が濃くなっていく。


「他のエルフはどうしたんだ?」


「こんな場所には住めないので、既に避難させている」


森の奥へと進み、とうとうイリアスが立ち止まった。

淀んだ空気の中でも、その木の巨大さは分かる。

そして瘴気(しょうき)の発生場所がここだとも。


「この森の神木だ。そこに矢が刺さっているだろう?」


見上げると、神木の中心に刺さる黒い矢から、瘴気(しょうき)が放たれている。

あの高さを登るのは、普通の人間には大変かもしれない。


「では、あれを抜いてくれ」


「……」


ジノは仕方なく高くジャンプして、矢を引き抜いた。

それは拍子抜けするほど、あっさり抜けた。


瞬く間に瘴気(しょうき)が晴れ、森は清浄さを取り戻していく。


「なぁ、これ抜けるなら誰でも良かったんじゃ……」


其方(そなた)には容易(たやす)いだけだ」


「私は矢に触れることすら出来ぬ」


(そもそも身長届かねーだろ…)


抜いた矢からは、もう何も感じない。


「で、これはどういうことだ?」


「闇の勢力が力を増している。各地の聖域がどんどん穢されている」


「魔王は仕事してないけどな……」


「魔王に代わる勢力が台頭してきているのだ」


「フゥン?」


瘴気(しょうき)の霧がすっかり晴れると、ツリーハウスがあちこちに見えた。


「で、まさか各地でこんなことを繰り返せって俺に言う?」


其方(そなた)が勇者業を続けるなら、そうなるであろうな」


「……(むし)ろ、レオよりも適任やもしれぬ。其方(そなた)は闇の瘴気(しょうき)をものともしない」


「お前、どこまで知ってんの?」


どうにも話が上手くいきすぎている気がする。


イリアスは神木の幹に頬を寄せ、目を閉じた。


「お前、全部知ってて、俺をここへ連れてきたろ?」


「……静かに」


仕方なく、神木に張り付いたままのイリアスの背中を(しばら)く眺めていた。


「私はこの神木から得た知識を持つ。森の賢者だ」


「──お前を探す者達がいる」


「そりゃ、俺は逃げてきたからな」


「困ったことがあるなら、聞こう。今回の礼として」


目の前のエルフは多分、色々知っている。


「聖剣握るとさ、身体の中が()けるんだ。回復(ヒール)されるとダメージ喰らう」


「それは、其方(そなた)の属性が闇だから、仕方ない」


「いや、だから何で俺が勇者なんだ?」


「聖剣の意思だから、私にもどうにも出来ぬ」


「……」


「勇者って辞めれねーの?」


其方(そなた)が死ねば、次代へ移るだろう」


これでは(らち)が明かない。


「それなら質問を変える」


──それはずっと念頭にあった疑問。


「……俺は人間になれるのか?」


イリアスは目を大きく見開いて、押し黙った。

読んでいただきありがとうございます。


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