70、雨払い
「え、東側に巨大ロボ?」
ナナサカは目を丸くする、東側は敵も味方と居ないフリーだが、戦闘前にリダが東と南は攻め込んで来ないから無視して問題ないと言っていた方角だ。
戦術的な有用性が分からない、しかしリダが要請した以上、意味がある物だと目を逸らし、北を見る。
「あ、終わったかしら?」
その時は背後でガチャリとドアが開く音が聞こえた。
その声で女性研究者が外に出たのがわかった、振り向くべきか悩んだ瞬間、ナナサカの眼が遠い空から黒い点を捉えた、その黒い点はすぐに大きくなり、研究所へ向かっているミサイルだとナナサカは知覚する、その数10本。
「ナナサカ、北だけ見てろ、他は俺がなんとかする」
「……分かった、やってみせろ」
リダの言葉でナナサカは、リダが北以外の三方向を守り通すつもりなのを理解する、その為に東に巨大ロボを置いたのだろう、ミサイルからの盾にする為に。
南と西はどう守るつもりかは気になるが、正直ナナサカはそれどころではない。
リダから北を任されたとはいえ、相手はミサイル10本、そしてナナサカの武装は妖刀と拡散手榴弾、拡散手榴弾は上手く投げれば誘爆させられるかもしれないが、逆に下手に投げれば、ほぼ確定で研究所にミサイルが当たる未来になるだろう。
ナナサカは素早く思考する、拡散手榴弾は3発まで連続で投げれて、投げた後望むと、すぐに新しい拡散手榴弾が手の中に現れる、投げ切ったら、2秒の自動リロードタイムが発生する、常人ならばかなり速い自動リロードだが、ミサイル迎撃しないといけない今のナナサカにとっては、その間にミサイルの通過を許してしまう時間でもある。
「3発と妖刀で何とかするしかない」
視界端の拡散手榴弾の数が3/3発確認して、飛んできているミサイルの間隔などを把握する。
「なんとかなる!」
直感でそんな判断をするナナサカ、もうミサイルはかなり近くまで接近していた。
「接歩!」
研究所の防壁の上から弾丸のように飛び出して、体を捻りながら拡散手榴弾を投擲、そして一回転する頃には再び手には拡散手榴弾が現れ、再び投擲、そして妖刀に持ち替えて目の前に飛んできたミサイルを斬る。
斬ったミサイルが爆発するより先に空歩で軌道を変えて跳躍、すかさず拡散手榴弾を手に投擲、そして早業で妖刀を持ち、ミサイルを斬る。
そして2歩目、最後の空歩を使う瞬間、周囲に爆発とそれに伴い、拡散手榴弾の中にあった刃片の嵐が発生する、その刃片が北側から来た残りのミサイルを誘爆させる!
「刀坂流、風断ち!」
ナナサカは身を守る為に、妖刀による一閃で爆風を斬り払うが、拡散手榴弾の中にから生じた刃片を斬り払う余裕は無く、ナナサカの身体は爆発の衝撃で高速で飛翔する刃片に斬り刻まれる。
「ぐう!?」
強烈な痛みがナナサカに襲いかかる、ナナサカは苦しみの中、ああ、昔高い場所からうっかり落下した際の衝撃と痛みに似ているなと一瞬現実逃避するが、すぐに痛みで正気に戻る。
ナナサカの身体は2歩目の空歩で研究所の防壁の真上まで飛んでいた。
身を斬る防衛になったなとそんな事を思う、ナナサカの視界端には北以外の方角が見えた、東は巨大ロボがミサイルを全て受け止めていて、西は数多のサテライトレーザーで全てのミサイルを貫いている。
しかし南から飛んできているミサイルは健在だった、いや空からの砲弾で、2発のミサイルが爆散したが、まだ南からのミサイルが6発残っている。
「くっ……駄目だったか……」
ナナサカの身体は、なんとか研究所の防壁の上に転がるように着地する、HPはほぼミリ残り、不屈が発動した可能性が頭を過ぎる。
痛む身体にムチを打ち、すぐに起き上がり、南の方角を見る、すると再び空からの砲弾がミサイルを1発破壊する。
しかしあと5発のミサイルが研究所に迫っていた、着弾地点は研究所の屋上とナナサカの目はそう見切る、なんとか迎撃に動こうとするが、足が痛みで身体が止まる、視線を下に向けるとそこには拡散手榴弾がばら撒いていた刃片が突き刺さっていた。
「くそ!」
妖刀で刃片を取り除き再びミサイルを確認すると、研究所の防壁に付いていた銃器が4発のミサイルを迎撃して爆破する、しかし、処理しきれなかった最後の1発が、防壁を超えて研究所の屋上に突き刺さろうとしていた、接歩でももう間に合わない。
そしてナナサカの目には研究所の屋上に小さな女の子が立って居ることに気付き、それがさっきまで定期的に通信に割り込んできた研究所の女性だと気付いた。
「届かねぇ!」
ナナサカが防壁の上に立っている以上、距離のある研究所の屋上に居る女性研究者を守る為の妖刀は届かず、拡散手榴弾は確実に女性研究者に巻き込む、ナナサカの手段だけでは彼女の人生は爆死する運命だった。




