61、車両飛翔
巨大シャコ、1体だけならばナナサカの敵ではないどころか、多くのプレイヤーにとっては敵ではないのだが、今のナナサカは制御性能0なエアバイクから降りられない現状、一気に強敵になる。
エアバイクジエンドカスタムは一応ガトリング砲搭載されているが、ナナサカは期待していなかったし、視界端を見て、想定通りの物が見えた。
『ガトリング砲:44/44』
つまり44発撃ったら、弾切れだ、乗り物に付いている兵器はプレイヤーが手持ちする兵器と違い自動リロードされない、いわば使い切りだ。
ガトリング砲は連射性能が低い物でも1秒で10発の弾が出る、速い性能だと1秒で20発、つまり遅くても4秒弱、速いと2秒弱で弾切れを起こす。
人なら44発もあれば十分だが、巨大生物相手に44発は不十分だ、ましてや制御性能が皆無なジエンドカスタムでまともに狙いを定めるのは、それこそレーサーみたいなバイクと一心同体になれる存在のみだろう。
つまるところジエンドカスタムのガトリング砲はお飾り兵器、上層部が火器を付けろと言われて仕方なく付けたような物だろうと、ナナサカは高速で思考して結論づける。
既に巨大シャコは間近に迫っている、常人ならば動く前にこのまま巨大シャコと交通事故だが、ナナサカはその前に動けた!
「ウィーリー、接歩!」
ナナサカはウィーリーの要領で、エアバイクの前方を持ち上げる、エアバイクにタイヤは無い影響か、ナナサカの力が強いのか、軽々とエアバイクは傾く、そこから接歩で地を蹴り、エアバイク事ジャンプを試みる。
ナナサカ自身これで上手く行くとは思ってなかった、現実世界にエアバイクなんて無く、どういう機構でエアバイクが動いているか分かってなかったのだ。
その結果……。
「うわあああ!?」
ナナサカは錐揉み回転しながら、空へかっ飛んだ! 巨大シャコはナナサカを攻撃しようとするがシャコパンチは高速で空に突撃するエアバイクを捕らえられない。
ナナサカは巨大シャコにやられるという窮地は脱したが、すぐに次が訪れる、空を飛んでいたエアバイクは回転したまま、山なりの軌道を描き、つまり地面に向かって落ち始めた。
「ぐおおお!? 空歩!」
ナナサカは足掻くように空歩で、錐揉み回転を止めて、上手く着地しようとするが……。
ミシ!
「あぐ!?」
片足に激痛が走り、視界端のナナサカのHPバーが5分の1なくなるが、なんとか錐揉み回転を止めて、落下速度も落とすことが出来た。
ぐわんと大きく揺れたが、なんとか地面に着地するナナサカ、地に足をつけて空歩を再使用可能にする、エアバイクに乗ってるので、地に足をつけても失格にならない。
「もうちょっと別の制御方法なり、回避方法を見つけないと身が持たないな!」
ナナサカは飛び越えた巨大シャコから逃げるようにハンドルを捻り、急加速、巨大シャコから逃げる。
巨大シャコから逃れたナナサカに待っていたのは旋回ゾーン、マップからして、曲がらないといけないシーンになる。
「だあああ!」
ナナサカは車体を傾け、そして接歩と空歩、両方駆使して段階的に速度を殺して、再び急発進で加速する。
「よし、なんか出来た!」
一歩間違えれば足を痛め、再びHPバーを削る事になっていたが、ナナサカはそれを乗り越え、旋回方法を学ぶ。
「はあ、はあ! さっきの旋回の要領でブレーキかければ止まれるし、あとはゴールまで走るだけ、巨大生物は……ひとまず走る!」
ナナサカはそう独り言を口にして、接歩と空歩で無理やりジエンドカスタムを制御して走らせる。
しかしナナサカの思考の端には、仮にこの速度でゴールしても優勝は難しいのではないかという思考があった。
優勝するなら、今の速度を維持したまま、巨大生物を狩るべきではないか、そんな考えが浮かぶなか、ナナサカを乗せたジエンドカスタムは市街地を抜けて、田んぼが多い農地に出て、更に大量の巨大生物を視認した。




