47、剣坂流序
「ひい、はふ……」
「これは新しい防御スタンスだな、俺とリダの中間と言ったところか」
訓練場でぶっ倒れているケルン一等兵の隣でナナサカは考え込む。
ケルン一等兵はその後何度もナナサカに攻撃されて、回避行動を余儀なくされた、リダは数えていたが20回以上まともに回避や防御が出来ず、吹き飛ばされていた。
その結果、最終的に接歩で攻撃の大部分を回避しつつ、脚力不足で回避しきれない所は木刀で滑るように受け流して、大ダメージを受けずに凌ぐ技を身に着けた。
「だけど、実戦で使えないね、ナナサカみたいに刀持たせて突撃なんてさせられるか」
「まあ、それはそうなけど……無意味ではないぞ」
「それはそうだな」
2人の目の前にはシステム画面が現れて、そこにはケルン一等兵の努力が実った表示がされていた。
『ケルン一等兵はRS:剣坂流序を獲得しました!』
「効果は回避時に小ボーナス、防御時に小ボーナス、被弾時超低確率でダメージを無効化にする……小さな実りだな」
「PL全体で見ても、俺達みたいに特大や大ボーナスは希少だからな? ナナサカだって、10年以上磨いた剣坂流を数時間でケルン一等兵にあっさり習得されたら嫌だろ?」
「まあ、それはそうだが……そこは一旦置いといて、見事だ、ケルン……お前は見事入口とはいえ剣坂流の技を未完成ながらも2つ収めた、接歩も坂滑もケルンの命を守る技になるはずだ」
「あ、ありがとうございます」
ケルン一等兵が立ち上がり敬礼と同時に3人は訓練場の前にワープした。
「と、会話中でも移動するんだな」
「あの、ナナサカ剣士……ナナサカ剣士は剣坂流を何年で極めたんですか?」
ワープに驚いているナナサカにケルン一等兵が質問する。
「うーん、2分しか出せない本気リダをぶった斬れてないから、極めたとは言えないけど……ケルン一等兵を近接武器で巨大生物を挑ませるには…最低でも一年くらい欲しいな」
「あと、ケルン一等兵、剣坂流に入門したなら一応ナナサカを剣士呼びじゃなくて、師範呼びにしな」
ナナサカが思考しながら、質問に答えていると、リダがムッとした顔をしつつもケルン一等兵にナナサカの呼び方を変えるように言う。
勿論、強さの立場的にケルン一等兵は逆らうことなくリダの言うことを聞く。
「わかりました、リーダー少将、ナナサカ師範、これからも指導お願いします!」
「あ、出来れば俺はリダで頼む」
「おいおい、自分だけ呼び捨てなんてさせないぞ? 師範権限にてケルン一等兵はリダのことをリーダー少将と呼ぶことを命ずる!」
ナナサカは縮地消音歩を無駄遣いしてリダの背後に回り、何故か羽交い締めする。
「わ、わかりました、リーダー少将は今までどおりの呼び方をします!」
ケルン一等兵はリダを羽交い締めにしているリダに少し引きつつ、承諾する。
「離せ! なぜ羽交い締めする!?」
「いやなんとなく?」
「くそ、気まぐれかよ、力強さEによるスペック差で全然抜け出せねぇ!」
ジタバタするリダを羽交い締めし続けるナナサカ、現実なら力差は殆どない故に比較的簡単に羽交い締めから抜け出せるのだが、AEDの世界においては、ゲームによるステータス補正が発生して、数値としては伏せられているが、リアルスペックにガッツリ上乗せする形で発生しているので、ステータスで力強さEのリダは力強さCのナナサカの拘束を振りほどけなかった。
「お二人とも、仲いいですね……」
「これを仲いいと評していいのか、腐れ縁だぞ!? というかいい加減離れろ!」
「へいへい」
ナナサカはリダの拘束を解除する、ついでにナナサカはリダに質問する。
「そういえばリダ、俺達さっきまで訓練場の中にいて、ケルン一等兵と共に外にワープしてきたけど、ケルン一等兵がワープに関して特に無反応なのはなんでだ?」
「それはそういうものだとしか言えないな、このゲームのAIはそこまで優秀じゃないし、仮に別の世界の地球から来たと言っても、返事してくれないと思うぞ?」
リダが返答を返しているのをナナサカは聞きつつ、ケルン一等兵の方を見る、自分達の会話は聞こえているはずだが、特に変わった反応はしなかった。
「ケルン一等兵、俺達のやりとり聞いてどう思った?」
「え、えーーと、とても長い付き合いなんだなと思いました、羽交い締めなんてお互いを理解してないと、喧嘩になりますし」
ナナサカがケルン一等兵に質問すると、ケルン一等兵はゲーム関連には一切触れず、ナナサカとリダの関係性を答えた。
「あんまりNPCに現実世界の話すると、変人に見られるから、気をつけなよ」
「わかったよ」
リダの言葉にナナサカが承諾すると、2人の耳に、ピンポンパンポンと放送が流れる前の音が聞こえた。




