109、拡張機兵
「その兵器の名前は拡張機兵、ヘブンスロープ……近接特化型の兵士が使えるように設計された搭乗兵器の試作機よ」
「漢字にすると天国坂……倒されて成仏しそうでなんか不吉なんだが」
「じゃあリダ様名付けてください」
「俺!? はあはあ、すまん余裕ないからナナサカパス!」
マトラがリダに命名をお願いしたら、移動中のリダはナナサカにパスする。
「え、えーと、ストロンチウム! 拡張機兵ストロンチウムに搭乗するぞ!」
「元素から名前引っ張るにしても、もう少しかっこいい元素の名前から持っていきなさいよ!?」
「命名権は俺に飛んできたからいいだろ、天国坂よりかはマシだろ! そもそも巨大怪獣見えてきたから乗るよ!」
ナナサカはそう言いながら拡張機兵に乗ろうとするが……。
「どう乗るのこれ?」
ナナサカからしたら搭乗口が見当たらないのでどうすれば良いのかと困っていたら、拡張機兵は自動で動き、ナナサカの前で膝を付き、搭乗口を開いた、そこには座席があった。
「そこに乗ればいいんだな!」
ナナサカは跳躍して、拡張機兵ストロンチウムに乗り込む。
ナナサカが座席に座ると同時にナナサカの手元にレバーが現れたのでナナサカは反射的にそれを握る。
すると手首周りが金属で固定される!
「なにこれ!? ひゃあ!?」
驚く間もなく、座った筈の座席は垂直になり、ナナサカの身体は強制的に立たされる、更に足も金属で固定される。
「なにこれ!? 処刑道具!?」
「違うわよ、それは操縦者の動きに合わせて、ロボットが動いてくれるのよ、例えるなら外付けの筋肉よ」
「外付けの筋肉……? 多分だけど本気で動いたら、重量とかG周りで金属が俺の動きに耐えられなくなって、自壊すると思うんだが」
ナナサカは正直な感想を言う、剣坂流の動きは人間の靭やかさや鍛えた強靭さがある前提の技で、硬い金属での模倣は不可能に近いというのがナナサカの考えだった。
「わかってるわよ、多分人外の動きをしたら、その分壊れて行くから、出来る限り人外の動きをしないで戦うか、極力動かないように敵を倒して」
「近接戦闘特化な俺に極力動くなとは、無理難題を……そもそも剣や武装は何処だ、わざわざ俺に渡したということは剣……或いは刀の兵器があるんだろ」
マトラの指示にナナサカは苦笑いしつつも装備兵器に関して説明を求む。
「まずは近接武器の刀ですが、背中に手を向けると剣が取り出せます、そして肩に拡散グレネードを搭載していますので、撃つ際は両手を前に突き出して、グレネードと叫べば、撃てるわ、拡散する分、狙わなくても当たるはずよ」
「刀と拡散グレネードの2つだけか」
ナナサカはそう言いながら背中に手を向けると、拡張機兵ストロンチウムは複数の巨大生物を纏めて一刀両断出来そうな大きな剣を手にした。
「これ以上武装追加したら、貴方の機動力を模倣したらすぐに壊れてしまうという予測が出来たからね」
「しかし俺が扱う前提の兵器を作ってくれるなんてな、てっきりリダ専用兵器を作るのかなと思っていたのに」
「それは輸送船の装甲を手に入れたら作る予定だったのよ、今貴方が乗っている兵器も、本来の予定では、装甲が手に入った後に渡すつもりだったのよ……まさか装甲どころか、輸送船そのものを鹵獲するとは思わなかったから、急遽拡張機兵を出したけど、テストは殆ど出来てない実質未完成品で、こっちは冷や汗ものよ」
ナナサカの素朴な疑問にマトラが震え声で答える、どうやら拡張機兵は出す予定はなかったらしいが、輸送船の鹵獲はそれだけ人類の陣営に大きなメリットをもたらす可能性がある行為だったのか、マトラは未完成品をナナサカに託す選択肢をした。
ナナサカは動作確認の為に数回ジャンプする、空歩も試すが、代わりに拡張機兵の背中に付いたブースターでちょっと宙を浮く。
数歩移動、緩く腕を動かす、どれも自分の延長線上に扱えた。
「成る程……ならこの未完成品、無駄にはしないさ」
もうすぐそこまで巨大怪獣や新たな輸送船から投下された巨大生物が近付いて来ていた。




