24話 嬉しくなったら「ありがと」くん
今日の言霊園には、おっとりした「どうぞ」さんと、いつも朗らかな「ありがとう」さんが遊びに来ています。
「どうぞ」さんがひなたくんにおもちゃを貸してあげると、ひなたくんはそのおもちゃを今度は「ありがとう」さんへ差し出します。
「どうじょ」
「ありがとう、ひなたくん!」
そんな風に、言葉とおもちゃを交互に手渡す遊びを楽しんでいました。
ゲンジおにいさんが、ひなたくんに優しく語りかけます。
「誰かに何かをしてもらって、心が嬉しくなった時。
……その気持ちを『ありがとう』って伝えてあげると、みんなももっと嬉しくなるんだよ」
すると、コトハおねえさんも手を差し出しました。
「ひなたくん、私にもそのおもちゃ、貸してほしいな」
ひなたくんはニコニコしながらおもちゃを差し出しました。
「どうじょ」
「ありがとー! ひなたくん、とっても嬉しいわ!」
その時、外の世界からママの弾んだ声が降ってきました。
『ひなた、ママにくれるの? ありがとー! じゃあ、お礼にこれあげるね。はい、どうぞ!』
ママから渡されたお返しの温かさが、ひなたくんの心にじんわりと広がりました。
その瞬間、ひなたくんの口から自然と言葉がこぼれました。
「……ありがと」
すると、ひなたくんの胸から小さな光がキラキラと飛び出しました。
光の中から現れたのは、ひなたくんにそっくりな姿をした、手のひらサイズの「ありがと」くんです。
「ありがと」くんが生まれてから、ひなたくんの周りはもっと賑やかになりました。
くるまくんがおもちゃを貸してくれたら、
「ありがと」
ワンワンくんが、転びそうになった自分を支えてくれたら、
「ありがと」
ママとパパからの温かい気持ちに、
「ありがと」
ひなたくんは、何かをしてもらって心が温かくなるたびに、その気持ちを言葉にして届けるようになりました。
「……ひなたくん、本当に立派になったわね」
コトハおねえさんが、ぽつりと呟きました。
「ああ。みんなの優しさが、わかるようになったんだね」
ゲンジおにいさんも頷きます。
成長していくひなたくんの姿を、おねえさんとおにいさんは、少しだけ寂しげな笑顔で見つめていました。




