25話 この子の名前は「ミーコ」
言霊園のソファの上では、いつも三毛猫がまるくなって眠っています。
ひなたくんとニャンニャンちゃんは、その隣に並んで座り、
「ニャンニャン、よしよし」
と、小さな手で交互に優しく撫でていました。
「この猫さんは、オギャーちゃんが生まれたばかりの頃から、ずっとここにいてくれるわね」
コトハおねえさんが懐かしそうに目を細めます。
「そうだね。きっとこの子も、僕たちと同じようにひなたくんに寄りそって、成長を見守ってくれてるんだろうね」
ゲンジおにいさんも、その柔らかな毛並みを見つめて微笑みました。
その時、外の世界からママの穏やかな声が届きました。
『ひなたー。この子は「ニャンニャン」だけどね、私たちの家族だから、ちゃんとお名前があるのよ。……「ミーコ」だよ。ミーコ!』
「……ミーコ」
ひなたくんがその音をそっと口にすると、隣にいたニャンニャンちゃんが、ひなたくんに小さく手を振りました。
そのまま、彼女の体はキラキラとした光の粒に変わり、眠っている三毛猫の体の中へとゆっくり溶け込んでいったのです。
見た目はいつもの三毛猫のままですが、ひなたくんの目には、さっきまでよりもずっと、特別な存在に見えていました。
そしてミーコに顔を埋めて気持ちを伝えます。
「ミーコ…ちゅき!」
「この子の名前は、ミーコちゃんだったんだね」
コトハおねえさんが、名前を呼んでミーコを撫でました。
「ひなたくん。大切な人や、大事なものには、みんな名前があるんだよ。……世界でたった一つの、特別な存在になるように。」
ゲンジおにいさんがひなたくんの目を見て続けます。
「そして、僕たちにも名前があるんだ。僕はゲンジ」
「私は、コトハよ」
「なまえ……」
ひなたくんは、その言葉の意味を噛みしめるように、じっと自分の小さなおててを見つめていました。




