15話 ううん。わたしは「ニャンニャン」ちゃん
ワンワンくんは今日も忙しそうに園内を走り周っています。
窓の外を通り過ぎる犬を見つければ、身を乗り出して
「ワンワン!」
空を飛ぶ小鳥を見上げれば、指をさして
「ワンワン!」
動物の本を開けば、ライオンもゾウもウサギも、片っ端から
「ワンワン! ワンワン! ワンワン!」
ふわふわして動くものを「ワンワン!」といい、指差し確認も忘れません。
ある時、ひなたくんとワンワンくんが仲良く動物図鑑を見ていると、園にいつもいる猫が静かに近づいてきました。
そして、ひなたくんの足元に体をすり寄せ、親愛の情を込めて頭をこすりつけます。
それを見たワンワンくんが、すかさず「ワンワン!」と高らかに宣言しようとした、その時です。
空からママの優しい声が降ってきました。
『ひなたー、その子はワンワンじゃなくて、猫ちゃん。ニャンニャンだよ』
「……ニャンニャン?」
ひなたくんが不思議そうにその言葉を聞き返した、その瞬間、足元の猫から眩い光が飛び出しました。
光の中から現れたのは、猫の耳がついたカチューシャを付けた、ちょっぴりおませな感じの女の子。
ワンワンくんは、戸惑いながら尋ねます。
「……ワンワン?」
すると女の子は、ふいっと可愛らしく首を横に振って答えました。
「ううん。わたしはニャンニャンちゃん」
「わあ、すごいわひなたくん! 犬と猫が違うって、ちゃんとわかったのね!」
コトハおねえさんが手を叩いて嬉しそうに駆け寄ります。
外界のママも声を弾ませます。
『そうだよニャンニャン! ニャンニャンだよ!』
さあ、それからが大変です。
「ふわふわした動くもの=ワンワン」ではないと気づいたひなたくんの頭の中で、動物たちの世界が一気に色づきました。その気づきに呼応するように、言葉の街からたくさんの動物たちが園へと押し寄せてきたのです。
「ピーピー!」(小鳥)
「モーモー!」(牛)
「ガオー!」(ライオン)
ゲンジおにいさんは、園庭を駆け回る動物たちを見て、呆然と呟きました。
「これは……まるで動物園だね。しばらくは、もっと増えそうだ……」
ひなたくんは真剣な眼差しで、目の前に現れた動物たちと、手元の動物図鑑を見比べています。




