中盤戦だョ!全員集合
うごー、仕事めっちゃ忙しい…
ところで、ストーンオーシャン最高ですよね。
真っ白に染まった視界の中で、それが白い布だってことに気づくのに少しかかった。エプロンだ。
「抱えるよ。つかまって」
耳元でそう囁かれて、思わずメイド服にしがみついた。そう、コレはアタシの生存本能に従った行為であって、耳元で囁かれてちょっとゾクゾクして思わずとかそういったことでは全く無いから。…ないから!
背中に左手が回り、右手で足を抱えられ、いわゆるお姫様抱っこの状態で、アタシは抱え上げられた。え?マジで!?、お姫様抱っことか初めてなんですケド!めっちゃ恥ずかしいんですケド!
ゆっくりとした動作に感じたけど、実際は全部一瞬の出来事だったみたい。アヤはセージが放った魔法をなんでもないかのように避けると、アタシを抱えたままセージの方へと向かっていく。あれ?アタシのさっきまでのピンチは何だったの?っていうかコレアタシピンチ継続中なのでは?
アヤはアタシを抱えたまま、岩の上を器用に走り抜けていく。スゴイな。アタシを軽々と抱えられるって思ってたよりも腕力あるし。っていうかジェネラルとナイトはどうしたんだろ?
そう思ってチラッとジェネラルたちがいた方を見てみると、なんかアリたちが大混乱を起こしてた。ジェネラルがなんか変な格好で固まってて、そのせいかナイトたちが右往左往してる。一体何をどうしたらあんな感じになるんだろ?
「さーて、しっかり掴まっててねー」
「え?ちょ、待っ…きゃあ!」
セージたちのすぐ近くまで来たとき、アヤがアタシに声をかけたと思ったら、急に高く飛び上がった。ガバナンさんも驚いてる。ま、まだ心の準備がー!っていうかなんでそんなに高く跳べんのー!?
「左手離すよー」
「へ?うそっ。」
言われたとおり、背中に回されていた左手が離れる。とっさにアヤの体に思いっきり抱きつくような格好でしがみついた。思ってたよりも、結構体ががっしりしてる。アヤって着痩せするタイプ?…ん?いや、コレ、もしかして………マジ?
いやー、アカリちゃんたちの方を気にかけといて正解だったね。アリさんがアカリちゃんに集中攻撃をしてたから、将軍様たちの相手を適当に切り上げて助けることにしたよ。ちょうどまた騎士アリたちが交通事故を起こして、ついでに将軍様の動きを止めたところだったから、いいタイミングだったね。
ベルちゃんたちが調べたあとの岩を伝って、アカリちゃんのところへてててーっとね。うむ、アリさんじゃないってわかってると、安心して動けるね。あ、アカリちゃんが転けた。痛そう。
賢者くんがアカリちゃんに向けて魔法を撃ったけど、ここからならわたしのほうが早いね。ちゃちゃっとアカリちゃんを抱えて、賢者くんの魔法を躱すことにしたよ。…あ、ちゃんと抱える前に声をかけないとね。急に抱えちゃったら、アカリちゃんがびっくりしちゃうかもしれないからね。抱える前に気がついてよかったね。
アカリちゃんに、抱えるよーって声をかけたら、すぐにしがみついてきたね。うむ、素直!やっぱり声をかけて正解だったね。よーし、このあとも、ちゃんと声をかけるようにしようかな。
アカリちゃんを抱えたら、早速賢者くんへのお礼参りだね。借りは速攻で返すべし!お父さんが口を酸っぱくして言ってたからね。10倍返しじゃー!
「さーて、しっかり掴まっててねー」
「え?ちょ、待っ…きゃあ!」
アカリちゃんを抱えたまま、賢者くんの手前で大ジャンプ。おっと、ちゃんと声をかけたけど、それでもびっくりさせちゃったみたいだね。まあ、わたしもここまで大ジャンプできるとは思ってなかったからね。実は、ジャンプするときに魔眼の力を使って、呪いを少しの間だけ開放したんだよね。そうしないとろくに跳べそうになかったし。…あ、別にアカリちゃんが重いとかそういうことじゃないよ。わたしの脚力不足かな。どちらかって言うと、見た目通り軽いね。ちゃんとご飯食べてるのかな?
「左手離すよー」
「へ?うそっ。」
ほんとー。賢者くんに攻撃するために、アカリちゃんの背中から左手を離す。ちゃんとその前に、アカリちゃんには声をかけたよ。そのおかげでアカリちゃんがわたしにしっかりしがみついてくれたから、これで安心して左手が使えるね!
左手を軽く振って、袖口からナイフ(仮)を取り出す。このナイフ(仮)は、ずっと袖口にしまってあったわけじゃなくて、今左手を振ったときに、アイテムボックスから袖口を通して出したものなんだよ。普通はそういうことはできないんだけど、なんと!このメイド服を靴やカチューシャとかとセットで着けてると、服の指定の場所から、簡単な動作でナイフが取り出せるのだ!って天夏ちゃんに教えてもらったよ。だから高いんだって。
ちなみに、取り出せるのはナイフだけじゃなくて、正確には「小刀」っていう武器の種類のものになるらしいね。このメイド服を作った人の強いこだわりで「ナイフって説明してください!」って天夏ちゃんたちは言われたみたいだけど。
今取り出したナイフ(仮)も、正直ナイフじゃなくてドスだよね。柄のところは木で出来てるし、柄頭真っ平らだし。作ったのは、昼間に天夏ちゃんのところにいたバンジョウさんだね。なんかいっぱい似たようなの作ってたよ。きっとバンジョウさんの趣味なんだろうね。
取り出したドスを、下の賢者くんに向かって、ていっ!て投げる。ドスはまっすぐ飛んで、賢者くんの頭と胸の間にある甲殻の隙間に突き刺さったね。よーし!ねらいどおり!将軍様のときと同じように、賢者くんの動きが止まる。ふふふふ。これでもう賢者くんはわたしたちの次の一撃を必ず食らってしまうのだ。作戦通りだね!
「「「ギギギギギ!!!!」」」
「させんばい!!」
「はあっ!」
「「「ギギィアア!!」」」
「おお、すごいね」
空中で方向転換できないわたしたちに、魔導師くんたちが魔法を撃とうとしてたけど、クリムゾンちゃんとガバナンくんが攻撃して、詠唱が中断されたね。いやー、これについては、アカリちゃんかばいつつダメージを無視して突っ込むしかないかなーって思ってたから、嬉しい誤算だね。じゃあ、邪魔も入らないみたいだし、思いっきり行こうかな!
(裏参番二式、破釘)
アカリちゃんに当たらないように気をつけながら、左足を高く掲げる。…あ、一応裾は気にしておこうかな。そして、落下の勢いを全部乗っけて、賢者くんに突き刺さったドスへと踵を振り落とす!
「ギギゴギゴゴオォォ!!」
狙い違わず落とされた槌が、釘を更に奥へと押し込んだ。うむ!手応え有り!2人分の重さを乗せた一撃だからね。結構いいダメージになってるね。…むっ、手応えはあるけど、賢者くん倒れないね。釘が小さかったかな。それともまだ軽すぎたかな。まあいいや。やられた分は返せたよね。ちゃちゃっと後ろに下がろうかな。アリさんたちのど真ん中にいるし。アカリちゃん抱えたままじゃあね。いい的だからね。
「ゴゴゴギ!!」
「「「ギギイイイイイイ!!」」」
あちゃー、言ったそばからいい的になっちゃってるね。賢者くんが命令して、魔導師くんたちが一斉にわたしたちに向けて魔法を撃とうとしてるね。統率が取れてて、うまく死角が無いように調整してる。うーん、何発かもらっちゃうかも。まあ、死にはしないよね。…たぶん。
アカリちゃんを落っことさないように強めに抱きかかえて、右斜め後方へと跳ぶ。本当は呪いを使いたかったんだけど、一度開放してからまた開放できるようになるまで、時間を置かないといけないみたい。使おうとしたら、
《魔眼開放可能まで残り4:51》
ってアナウンスされたよ。たぶん、一度使ってから5分間は置かないと再使用できないんだろうね。困ったな。
とりあえず少しでも魔法を相殺できるように、魔法を詠唱して準備だけはしておく。アカリちゃんもわたしが魔法を撃てるように、しっかりとわたしにしがみついてくれてるね。これなら左手は問題なく使えそう。
クリムゾンちゃんたちは、さっきの妨害で結構無理してくれてたみたいで、次の攻撃までもう少し掛かりそう。まあ、しょうがないね。
「「「『ギギギ』!!!」」」
おっと、考え事をしてたら、魔導師くんたちが一斉に撃ってきたね。岩がすごい勢いで飛んできたよ。これは土魔法だね。さーて、何発しのげるかな?…って思ってたけど、結局、その心配は必要なかったね。だって、
「させません!『スタウト』!!」
「おう。間にあったみてえだな。」
「きゅう!」
「おそくなりました!」
わたしと魔法の間に、大きな盾を構えたエミリーちゃんが割って入ったね。盾が光って、魔法を全部受け止めてる。おおー、かっこいい。エミリーちゃん以外のみんなも、戻ってきてる。岩のチェックが終わったみたいだね。と、いうことは…
「ここからが本番たいね!」
「にゃ!」
クリムゾンちゃんが言う通り、ここからが本当の勝負だね!クリムゾンちゃんは、さっきまではちょっと離れたところにいたはずだけど、アカリちゃんを心配してここまで駆けつけてくれたみたいだね。いい子!…あ、そだ。
「アカリちゃん、下ろすよ〜」
「あ、うん、ありがと…」
「どういたしまして〜」
アカリちゃんは、なんか戸惑ってるのかな?すこしぼーっとしてるというか、フラフラしてるというか。もしかしたら、抱っこして後ろ向きのまま結構動いたから、少し酔ったのかもしれないね。ちょっと反省。
「アカリちゃん、だいじょうぶ?まだ動ける?」
「えっ?…ああ、うん。大丈夫。…うん!もう大丈夫!」
おお、アグレッシブ。アカリちゃんは、気合を入れるためか自分の両頬をピシャリと叩くと、勢いよくお顔を上げたね。うむ!よくわかんないけど!とにかく大丈夫なら大丈夫だね!
「よし、調子が戻ったなら、こっからの作戦を決めっぞ。あっちも態勢を立て直すみてえだ。」
「はーい」
「ウチは相手の妨害をしとくけん、はよう決めるとよ。」
「いや、わりいが一人でやっても今は大した妨害にもならんだろ。それよりも知恵を出してくれ。」
「むー…しょうがなかね。」
ベルちゃんの言う通り、アリさんたちは、一度合流して態勢を立て直すみたいだね。こっちに見向きもしてないよ。できれば各個(各チーム?)撃破が一番ラクなんだろうけど、引き剥がすのはできなさそうだね。こっちも、回復したりして態勢を整えつつ、どうするか決めないとね。
「やはり、難しくとも再度ボスを分断するのがいいのではないでしょうか。重武装のアリに守りを固められて、その奥から魔法を連発されると厳しいですからね。」
「実際、それができれば一番いいんだろうケド、できるの?」
「そこなんだよなあ…」
「わたしにいい作戦があるよ」
「正直、難しいたいね。「あれ?」向こうもさっきん戦いでそれがマズイのはわかっちょうはずたい。」
「おーい」
「じゃ、じゃあこっちもオーソドックスにいきますか?」
「それも難しいですね。「作戦あるよ〜」耐久勝負なら向こうに分がありますよ。」
「そ、そうですか…」
「はいはーい!さくせん!あるよ!」
「はぁ…言ってみ。」
「うむ、えっとね…」
「…悪くねえか。当初の作戦にも近いしな。無視して悪かった。意外と考えてんだな。」
「ホントホント。意外だったわ。スゴイじゃん。」
「アヤはやればできる子たいね!」
「でしょう!わたし、デキる!」
「あ、やっぱりそんな感じなんですね。」
「そ、そういうところが…」
「みなさん、向こうもそろそろ来そうです。アヤさんの作戦で行きましょう。」
ガバナンくんの声に、みんなが応える。わーい。わたしの作戦が採用されたね!さーて、じゃあ、また先手を取らせてもらおうかな!
おっと、武器はどうしようかな。一応予備もあるし、別にツルハシでもいいけど、なんかね、飽きちゃったよね。…あ、そだそだ、そういえば新しい杖をまだあんまり使ってなかったね。もともとこの杖のためにここに来たんだし、何度か使って感覚はつかめてるし、よし、杖にしようかな!
「じゃあ、わたしから行くねー」
「こちらも続きます。」
「わ、わかりました。私も続きます!」
「オレもな。」
「にゃあ!」
「きゅう!」
「こっちも準備万全たい!」
「アタシもオッケー!」
「大丈夫です!」
よーし、みんな準備できたみたいだね。さーて、わたしも仕事しようかな!ふふふ、たまにはこういうのもいいね。じゃあ、
「いってきまーす!」
そう言って、さっきと同じようにアリさんたちへと一気に突撃する。さあ、どう出るかな?
「「「ギギギギ!」」」
「ありゃりゃ、そうきたか」
騎士さんのうち、3体がわたしの前に立ちはだかったね。むう、今一番してほしくない対応かな。
つまんなーい。もっといっぱい来ても良かったのにー。…秒殺しよ。
補足
メイド装備:メイドの武器といえばナイフ!という製作者の偏見により作成されている。「そのうち時も止めたい。」
ドス:刃物といえばコレ!という製作者の偏見により作成されている。「そのうちポン刀も打ちたい。」




