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大繁盛

書くスピードがどんどん遅くなっている気がする。


…きっと気のせいだな!

「おいしーい!おかわり!」

「にゃあー!」

「きゅうー!」

「いやー、そう喜んでもらえると、紹介したかいがありますね。うまうま。」

「あっはっは!いい食べっぷりのお客さんだねえ!従魔の子たちもどんどん食べなあ!」


 おいしい!ラブちゃんに案内されて、わたしは今屋台巡りをしてるよ!街の中央広場にある店で、買って食べて買って食べて買って…を繰り返してるね。今食べてるのは、『コケコル』っていうモンスターのお肉を味付けして油で揚げた『コル揚げ』だね。現実だと鶏の唐揚げが近いかな?


「おねえさーん、今あるコル揚げ全部ちょうだーい!」

「よしきた!1個10Rだから、全部で500Rだよ!」

「おっけー!これでいいかな!」

「まいど!お客さん細いんだからいっぱい食べなよ!」

「あははは!おねえさんのコル揚げならいくらでもいけちゃうね!」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。よし!今揚がった出来たてもおまけだよ!」

「ありがとー!」

「ありがとうございまーす。」

「ほら、これで全部だ。また来ておくれよ!」

「「はーい!」」

「にゃあ!」

「きゅう!」


 コル揚げをいっぱい買って、屋台を後にする。うむ!これで5軒目!美味しいお店がいっぱい!ラブちゃんには感謝だね!


 クロちゃんとユニちゃんは、1店舗目で起きたね。美味しいものには目がないみたい。美味しそうに色々食べてる二人(?)もかわいいね。ちなみに、ふたりとも肉でも野菜でも気にせず食べるね。ユニちゃんがお肉大丈夫だったのはちょっと意外だったかな。


「ハイこれ。ラブちゃんの分のコル揚げ」

「あー、さっきからもらってばっかりですけど、ほんとにいいんですか?」

「もちろん!ラブちゃんに教えてもらわなかったら買えなかったからね。天夏ちゃんや、クランの他のみんなと一緒に食べるといいよ」

「そうですか。では、ありがたく。」

「うむ!よーし!まだまだ食べるぞー!」

「おー!…あれ?」

「?どったの?」

「あ、すいません。クラマスから連絡きたので少々お待ちを…」

「おっけー」


 このゲームでは、フレ(フレンドの略なんだってラブちゃんに教えてもらったよ)に登録した相手に、メッセージを送ったり、電話みたいに通信したりできるんだって。相手の声は通信してる本人にしか聞こえないから、知らなかったら独り言を言ってるようにも見えるね。


 そう!さっきね、ラブちゃんに教えてもらったんだけど、この通信は相手の周りの音も聞こえるみたいで、ギルドでのお話のときには、天夏ちゃんと途中から通信してたみたい。少ない情報から全体の組み立てをするのは天夏ちゃんの得意分野らしくて、支部長さんの話を聞きながらラブちゃんに指示を出してたんだって。全然気が付かなかったね。


「えー、マジですか…じゃあ戻ったほうがいい感じですか…あ、はい。了解でーす。」


 ん?『Die dritte Arche』に戻るのかな?たしかに、結構ウロウロしてたし丁度いいかもね。


「アヤさん、クラマスが一度戻ってこれないかとのことなんですが…」

「いいよー。戻ろっか。結構食べたしね」

「どもども。助かります。」


 お土産も結構買ったしね。情報料がいくらになるのか楽しみだしね!…はっ!ま、まさか、やっぱり情報料が大した金額にならなくて、メイド装備のお金が足りないのかも……あわわわわ。ギルドでもらった報酬で足りるかな…。


「アヤさーん?どうしましたー?あ、もしかしてなんか用事とかありました?」

「え?…なんでもないよ。そう、なんでもないんだよ」

「はあ…?まあ何もないのであれば構いませんが。」


 うむ、だいじょうぶ。そう、きっと。だいじょうぶ…だいじょうぶ!


「よし!考えても仕方ないし、とにかく行ってみよう!」

「りょーかいです。行きましょうか。」

「おー!」


 ラブちゃんの案内で、もとの屋台に戻ることに。まあ、おんなじ広場内にあるんだし、すぐに着いたね。着いたんだけど…


「「なにこれ」」


 あ、ハモった。まあね、ラブちゃんも思わずそう言っちゃうよね。『Die dritte Arche』に戻ってきたんだけど、店の屋台を覆い尽くすほどの人の塊ができてるからね。ラブちゃんも驚いてるから、これまではこんなことなかったんだろうね。わたしたちが出てから、一体何があったのかな?


「テメー!割り込むんじゃねーよ!」

「押すなって!おい!押すなって!」

「順番に並んでくださーい!じゅーんばーんどーりにー!」


 うーむ、なんかものすごーく混み合ってるね。ラブちゃんが呼ばれたのは、きっとお店のお手伝いだよね。よく考えたら、わたしが直接呼ばれたわけじゃないし、今わたしがお店に行くのは、天夏ちゃんに迷惑がかかるのでは……。あわわわ。どうしよう?


「うげえ。この状況だから呼ばれたのか〜。よし、ここはバックレ…は無理か、さすがに。後が怖いな。」

「ねえねえ、ラブちゃん。もしかして、わたしは行かないほうがいいかな?」

「へっ?…あ〜、いや、うん。多分クラマスはアヤさんにも来てほしいと思うので、ここは行ったほうがいいのでは、と思います。」

「ほっ。そっか。じゃあ、行こうかな!えーと、列の最後尾はどこかな?」

「アヤさん、呼ばれてきてるんですから、裏口から入りましょう。関係者待遇と言うことで。」

「えっ、わたしもいいの?」

「構いませんよ。クラマスが呼んだってことは、多分早めにアヤさんと話しておきたいことがあるってことなんで。」

「なるほど!そういうことなら急いだほうがいいね」

「ええ。なので、案内しますね。こっちへどうぞ。」

「はーい」


 よかった。行ってもいいんだね。流石に、この混み合ってる渋滞列に並ぶのは、やだったからね。よかった。


 そのまま、ラブちゃんに連れられて、渋滞列をぐるっと迂回してお店の裏側へ案内されたね。すぐにお店の裏側出入り口に着いたんだけど、そこにはわたしの半分くらいの背丈でひげもじゃのおじいさんがいたよ。誰だろう?


「うぃーす、バン爺おつかれ〜。」

「…ああ。そいつか?」

「そそ、でさ……」


 こんなところにいて、ラブちゃんが話しかけたってことは、きっとクランの関係者なんだろうね。確かに、お店って言っても屋台で、裏口って言っても荷物で周りを塞いであるだけだから、ここの番は必要だよね。なっとく!


 おじいさんは結構無口な感じ。まあ、ラブちゃんとはちゃんと会話できてるみたいだから、単に口数が少ないだけかな。名前は『バンジョウ』さんで、文字の色は緑だから、プレイヤーだね。


「…おっけーおっけー。じゃあ、私達はクラマスのとこに行くから。」

「ああ、それがいい。」

「アヤさん、行きましょうか。やっぱりクラマスはアヤさんも呼んでるみたいなんで。」

「はーい!じゃあ、とおりまーす」

「ああ…」


 うむ、わたしだけ呼ばれてなかった!とかじゃなくてよかったね。やっぱりさっきの情報料のことかな?


 裏口から屋台に入ると、すぐそばが今わたしが着ているメイド服が置いてあったところだね。なるほど。そのまま進んでいって、さっきわたしたちがお話していたところに、天夏ちゃんがいた。なにやら、ものすごーく真剣なお顔でなにもない空中を見つめてるね。何かしらの画面が出てるのかな?


「クラマス〜?戻りましたよ。」

「やっほー。さっきぶりだね。きました!」

「ん?ああ、はい。先程ぶりです。ラブ、案内ありがと。早速で悪いんだけど、店の前の方出てくれる?」

「うへぇ、りょーかーい。あれを見たときから覚悟はしてました。」

「儲かるのはいいことなんだけど、店のキャパが足りてないからね。今だけと思って我慢して頂戴。ハイこれ商品リスト。」

「どれどれ…あー、やっぱり。じゃあ、行ってきます。」

「お願いね。私もすぐに行くから。」

「じゃあ、アヤさん。しばらく会えないと思うんで、杖を楽しみにしておいてください。次会うときは、私もユニちゃんのお友達をゲットしてきますよ。はいどうぞ。」

「どうもね。りょーかい!色々ありがとね〜」


 わたしにユニちゃんを手渡すと、そのまま、ラブちゃんは店の前の方にでてしまったね。おお、もっとユニちゃんと離れたくないって言うかなって思ってたけど、意外とすんなり返してくれたね。ふふふ、ユニちゃんにも新しいお友達ができるのはいいことだね。わたしも、どんどんレベルを上げて、いっぱいお友達を増やしていかないとね。


「さて、アヤさん。急にお呼びしてすみません。おそらく、これからもっと客が増えそうだったので。そうなると、渡す暇がなさそうですから。」

「おお、大繁盛だね。すごい」

「ええ、そのとおりなんですが、素直に喜べないですね。こっちの態勢が整ってなかったのが痛いです。まあ、今回の儲けで、なんとかできると思いますが。」


 まあね。あれだけお客さんがいたら、捌くのは大変だろうけど、その分儲けも大きいだろうからね。わたしも、あんまり邪魔をしちゃったら悪いから、すぐに用事を済ませちゃおうかな。お話するのは楽しいから、ちょっと残念だけどね。


「では、本題に入りましょう。アヤさん、今回の情報料ですが、計算の結果、こちらの金額になります。」

「おお、早速だね。わくわく」


 天夏ちゃんから、1枚のボードを手渡されたね。なんか色々書いてあるけど、一番下に、おっきく『差し引き買取額50,000R』って書いてあるね。…お、おお!やったー!お金がいっぱい!


「おおー!いっぱい!…あ、でもいいの?こんなにいっぱい。わたしが話したことってあんまり大したことはなかったような…?」

「いえいえ、アヤさん自身は実感されていないようですが、未発見の隠しボスに新スキル、呪いという新要素とかなりの大発見ですからね。」

「そなの?」

「ええ、β版からのプレイヤーが、この情報の重要性を特に理解できているようで、攻略組なんかからも情報の取引が持ちかけられてますよ。店の前の大渋滞がそれです。」

「はえー、たしかに店の前すごかったもんね。あれに並ばないといけないのかなって思ったら、ちょっとうんざりしたもんね」

「ふふ。まあ、そういうわけで、今後も色々使えそうな情報でしたからね。それにウルフの素材代も含めまして、6万Rで買取をさせていただきます。そこから、今アヤさんが身につけているメイド服装備や、お話しているときにこちらが提示した情報料の代金計1万Rを差し引きまして、今回5万Rでの買取額とさせていただいてます。なにかご質問等はありますか?」

「んー?情報料とか装備の相場とか全然知らないからね。別に天夏ちゃんを疑う理由もないし、特に問題ないかな!むしろ、装備代を払わなきゃいけないかなって思ってたから、そうならなくてよかったよ」

「…正直、性能の割にかけた金額が大きすぎるんですよねその装備。さっき計算していて、自分でも驚きましたし。使いこなせれば面白そうではあるんですが、私では無理ですね。」

「そうかな。見た目の割に結構動きやすくていい服だと思うけどね。仕立てもいいし」


 天夏ちゃんも着てみればいいのにね。美人さんだから、きっとよく似合うよ。


「気に入っていただけたなら、何よりです。では、今回の買取についての契約を、こちらにまとめてありますので、読んでいただいて問題なければサインをお願いします。」

「はーい。本格的だね。どれどれ…」


 …うむ!ざっと読んでみたけど、特に問題はなさそう。あたり前のことしか書いてないね。じゃあ、サインしてっと。


「よし、できた!はい、どうぞ」

「ありがとうございます。では、こちらが5万Rになります。どうぞ。」

「わーい♪何を買おうかな〜…あ、そうだ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「はい、何でしょう?」

「このゲームって、ゲームをやめるときってどうすればいいの?」

「ログアウトの方法ですか。宿屋などで休むときにログアウトができます。」

「わかったよ。宿屋だね。…ちなみに、それ以外だと何があるの?」

「そうですね。アイテムを使えば野宿なんかもできますよ。モンスターからログアウト中に襲われることがたまにあるみたいですが。」

「なるほど!そういうアイテムも買っといたほうがいいのかな?うーむ、まあいっか。後で考えよーっと。…えーっと、今の情報はいくらかな?」

「いえ、ゲームのヘルプでいつでも見れる情報なので構いませんよ。…これもチュートリアルで言われませんでした?」

「初耳だね!…ヘルプは1回全部見ておこうかな」

「それがいいかと。…あー、アヤさん。私からも実はお願いがありまして。」

「ん?なにかな。色々お世話になったからね。何でも言ってね」

「では、お言葉に甘えまして、…クロちゃんをもう一回抱っこさせてもらえませんか?」

「ふふふ。もちろんいいよ。はいどうぞ」

「あああああ、かわいい〜。」


 あれだけお世話になってる天夏ちゃんからのお願いってことで、ちょっと身構えちゃったけど、内容は微笑ましいものだったね。まあ、確かに、クロちゃんはとてもかわいいからね。天夏ちゃんが夢中になるのもわかるね。


 その後、天夏ちゃんは5分くらい幸せそうな顔で、眠ってるクロちゃんを抱っこしてた。うむうむ。見てるこっちも幸せな気分になるね。


「…ふう。アヤさん、ありがとうございました。お返ししますね。」

「はーい。どういたしまして。じゃあ、わたしはそろそろ宿屋を探そうかな!本当に、いろいろとありがとうね」

「いえいえ、また今後とも、『Die dritte Arche』をご贔屓にお願いしますね。」

「もちろん!」

「では、頼まれた装備ができましたら、また連絡しますので。ここを出られるときは裏口をご利用ください。」

「はーい!じゃ、またね〜!」

「ええ、では、また。」


 そう言って、お店を後にする。うむ。現在11時14分。現実だと午後6時近くだね。そろそろ一度ゲームをやめて、晩御飯食べたり、お風呂に入ったりしないとね。そしたら、またみんなで冒険だね!このゲームをやる目的も達せそうだし、うーむ。たのしみ!




 アヤさんが出ていった後、私はしばらく、さっきまで抱いていたクロちゃんの感触を思い出していた。つややかな毛ざわりと愛くるしい寝顔。やはりいい。現時点ではクロちゃん以外に見つかっていないが、リトルキャットが本格的に発見されたら、私も従魔として飼うのもいいかもしれない。さっきから割と本気でそう考えている自分がいる。まあ、今考えても仕方がない。


 それよりも、だ。まさかこのゲームであの顔を見るとは思わなかった。確か、以前ゲームは苦手だと言っていたはずだが、どういう風の吹き回しだろうか。それに、まさか自分も知らないようなモンスターまで倒しているとは思わなかった。知ってはいたが、どうやら自分の体を動かすのは得意なようだ。


 向こうがこっちに気づいていないようだったから、とっさにこっちも知らないフリをしたが、不自然になっていなかっただろうか。それにしても、


「おじいちゃん、相変わらず元気そうだったなぁ。」


補足

広場の屋台:0-15は初日にかなりまわっている。ちなみにコル揚げ屋の『おねえさん』は恰幅のいいおばちゃん。


バンジョウ:天夏からは、0-15が客を連れてくるとしか聞いていないので、アヤを女性だと思っている。


天夏:長女の長女。このあとちゃんと客対応をがんばった。

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